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「百鬼の忍」第三章完結!

第三章 【東京アンダーモラトリアム】 を、読んでいただいた皆様。誠にありがとうございました!
もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや☆評価を頂けますと幸いですm(_ _)m

せっかくなので、ここらで本作についてのちょっとした裏話でもできればと思います。



◆章タイトル
 これはちょっとしたパロディで、私が中高生の頃に雑誌で連載されていた漫画が元ネタです。
 大御所能力バトルものであるジョジョやハンターのような、複雑な駆け引きが無く、シンプルな「属性」「出力」「練度」でのみ展開する形式で、幼い自分にもわかりやすく好きな漫画でした。
 この漫画にも、バックボーンには「戦時の実験」があったので、そこをもっと具体化したものを見たいなぁ、というのは当時感じた気持ちであり、少なからずこの小説にも影響していると思います。
 執筆された先生の新作は長く見ないので寂しいですが、元気にしていて欲しいものです。

◆明松一族
 仄めかしこそしていましたが、いよいよ畜生みたいなバックグラウンドが描写されました。
 この時代の浄忍家系は前近代から現代への過渡期であり、人道軽視と科学技術の発展とが合わさり、尊厳の蹂躙、市井との価値観の摩擦が最大化する受難の時代でした。
(同世界観の令和である「くのいちJK」の浄忍家系は、大分まともになっています)
 朱弘に限らず他の家系も似たようなもので、その淀みに「折り合い」をつけるか、「逃げる」かです。
 しかし、浄忍家系は血の因果によってもたらされる「濁り」と同時に、使命として市井への「善意」も持ち合わせる矛盾を抱えており、この世界の男忍たちの受難は「力は無いのに、苦しむ市井の人は見えてしまう」悲しみに他なりません。
 それゆえに、自分に出来ることをと、仏門に入った者が、怨魔被害者を弔う「浄聞寺」を開いたりしたわけです。

 この世界において、明松朱弘は力や出会いに恵まれた、稀有な存在ではあります。
 だからこそ彼には、苦しみながらも前に進むヒーローであることが求められていくわけですね。
 
◆コクリコ靈信
 これはまあ、発想は駄洒落なんですが、ポケベルもガラケーもない、それどころか黒電話さえ交換手がいるこの時代においては、かなりのオーバーテクノロジーです。紙とコインだけで文字情報の伝達が出来るわけですしね。……まあ、平成に入ると流石に使われることもほぼ無くなるでしょうが。
 ただ、多分、この時点の精度は大分低いです。こっくりさんはキャリブレーションを行う座標が1点なので、相対距離のずれで、意味不明な文字列になったりします。こっくりさんは五十音表を用意するのも使用者なので、配置もまちまちですしね。
 多分、小鬼たちは最初の質問や、使用者のいたずらで文字配置を認識して、五十音の配置を取得してたのでしょう。
 葉子ちゃんと万美ちゃんは、巫力が低いので餌に不適と認識阻害をかけて逃がしました。「巫力の強い恋する乙女」と言う、絶好のカモである広子ちゃんだけ呼び出されたわけです。
 ……高速移動&音の遁法との戦闘経験を持ち、怨魔と性犯罪者を心底から憎悪する、朱弘と言う特大の地雷も一本釣りしてしまったのが、小鬼たちの運の尽きでしたね。
 まあ、広子ちゃんが彼の倫理のブレーキとなって、楽に殺してもらえただけ、まだ幸運でしょう。

◆綾夏の酒癖
 これは単純に体質です。
 一般的に精鬼は、膂力と巫力は桁外れですが、そのほかは人間とほぼ変わらず、鍛錬等をしなければ特殊な体質になったりしません。
 それに加え、綾夏も朱弘に心を許しているため、すぐだらしない感じになります。まあ、彼女も見栄っ張りなので、広子ちゃんが居たらギリギリ理性保てたかもしれませんね。

◆明松朱弘
 少年期の性的虐待と、それを固定化したシステムとして回し続ける実家への嫌悪。
 さらに浄忍としての使命感と良心が混ざり「アイデンティティかつトラウマ」の歪んだ自我に。
 人を助けられる立派な人になりたい、でも本当は誰かに助けて欲しかった。
 しかし、家族はもちろん、学校の先生にも、初恋の人にも打ち明けられない。
 彼の心は、仄暗い「離れ」の中に囚われ、ずっと出ることが叶いませんでした。

 誰よりも「顧みられない悲しみ」を理解し、そんな目に合う人は助けずにいられない。
 彼の人間性の根幹は、このエピソードの通りです。「あの時、自分の欲しかった助けを、他人に施す」。それゆえに、人を助けるほどに乾いていく因果を持っています。
 ピオニィの人々との出会いで、彼自身に穏やかな日々も訪れますが、心の傷は残ったまま。そのため、広子ちゃんにやってしまったこと、綾夏に失望されることが、再び傷をえぐります。
 
 対する綾夏の人間性はというと「あの時、自分に与えてくれたものを、あなたにも与える」です。近しい傷を持つ者として、彼女は朱弘から渡された救いを、彼にも「お裾分け」します。
 他ならぬ彼自身にもまた、寄り添ってくれる人は必要であり、二人は相互補完関係だった、というわけですね。

 ……じゃあ、初恋の人である守谷宮子は、その役割を果たすことは出来なかったのか?内気な少女時代はともかく、大人になってから優しい言葉をかけられなかったのか?
 そこはおそらく、これから語っていくことになるでしょう。



ひとまずはここまで。
第四章はストックが尽きているので、今度こそペースを落とした更新になると思います。
(長編コンテストの締め日までに、三章を全部入れたかったので、一気に消化してしまいました)
しばらくは、「幕間」とキャラ紹介を投下させて頂きますので、四章開始までの間、よろしければご覧になって頂ければと思います。

それでは、物語も折り返し、 【第四章】昭和異能蜜月録 を、ご期待ください!

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