次回更新まで空いてるので、
本編でやろうとしたけど入れる機会無さそうだったものを書いてお茶を濁します。
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「何でですかっ」
リリアナはアリアのその訴えに驚いた。
「……アリアちゃん? どうしたの?」
リリアナはまったく分からなかった。何なら喜ぶとばかり思っていた。リリアナがやったことは、クレープの新作を喜ぶかな思って持ち帰っただけである。
(一体何が……)
リリアナはアリアの様子を確かめたが、可愛く憤っていた。
アリアの頬は膨らんでおり、効果音を付けるなら「むむむっ」といったところ。
分かるのは何か面倒くさそうなことくらい。
「いいですか、時は残酷なものです。その対処を間違えば当然無惨な結末が待っているものです。分かりますか? 変化とはいつも最善を狙って起こすものなのです。逆があってはいけないのです」
「え、えっと……?」
やはりリリアナには分からない。
そのまましばし考えると、
――あ。
ひらめいた。
新作のクレープにだけ入っている食材があった。
「――もしかして干しブドウ嫌い?」
「くそまずい」
答え合わせが終わった。
「ちょっと癖あるもんね」
「悪魔の食べ物です」
「そこまでかな?」
「ぶにゅっとした不快な食感。舌を刺す中途半端な酸味。鼻に抜ける腐敗臭のような発酵臭。これは悪魔の食べ物と言って過言ではありませんっ」
滅茶苦茶言ってるのはアリアだが、その勢いにリリアナは負けそうになった。
「で、でもアリアちゃんって、本物の悪魔が出ても動じなさそうだけど」
「その状況であれば、まず会話を試みます」
こんにちわ。何の用ですか。
「そんで敵じゃなさそうだったら、会話を楽しみます。種族が違えばきっと面白い会話が出来るに違いありません」
「面白くなかった場合は?」
「つまんないので、その場を去ります」
「敵だったら?」
「毒の有無を確かめます」
「ああ、戦い慣れてる人ってまずそこを気にするんだ」
「いえ、戦った後のことです」
「どういうこと?」
「美味しいかもしれないじゃないですか」
「悪魔食べるんだ……」
「違いますよ。味見です」
「いや食べてる……」
「大抵の毒は苦いものです。そして苦いのは美味しくないです」
「毒効かないんだ……」
「何言ってるんですか。効くに決まってるじゃないですか。苦いじゃないですか」
効くの定義が常人と違いすぎた。
リリアナは目の前が真っ白になりそうなのを堪えた。
「うーん、どうしてこんな野生児に……」
見た目はお菓子を笑顔で堪能してそうなのに……と思ったあたりで、別にそこは間違っていないことに気付いた。少なくとも可愛いことだけは間違ってない。
「危ないからその辺で拾い食いとかはしないでね」
「何言ってるんですか、するわけないじゃないですか」
「そうだよね」
「街中で落ちてるものなんて食べようと思えないですよ」
条件付きだった。
つまり……、
「……森の中だと?」
嫌な予感。
「知ってますか、いかにも毒ありそうなキノコとかって案外美味しかったりするんですよ。酸味、苦み、辛味とありますが、辛味は割と当たりです」
「アリアちゃん?」
「まあ毒とか効かないんで、実際毒キノコかどうか分からないんですけど」
「えぇ……」
さすがにドン引きだった。
「でも苦かったら大抵毒なんで、分かると言えなくもないです」
「ヒロイン帰ってきて」