「⚓エレーナ少佐クロニクル 雨の日の美術館」
第9話(1) 優子のアパート。2017年11月14日(火)
2028年、人民解放軍は台湾に侵攻した。/🐟フランク ✥ ロイド🐟 - カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/2912051604458666722/episodes/2912051604744028270 三國優子のマンションは大井町駅の東口を出て品川方面に徒歩6分にある。マンションとは名ばかり、アパートだ。
京浜東北線沿いの道を歩く。線路を隔てて正面はJR広町の引込線になっている。何年か経てばJRは引込線区域を再開発して高層ビルを建てる計画だ。家賃は9万5千円と管理費4千円。間取りは四畳半二間に六畳のダイニングキッチン。小さい押入れが優子の部屋の方に付いているが他に収納スペースなどない。優子と智子は家具など買わずにスーツケースに衣服をしまっている。寝具も布団だ。四畳半にベッドを置いたら動き回るスペースなどなくなってしまう。
彼女らパーサーの給料は17~18万円。副収入が各々10万円というところだ。厚生年金、健康保険、雇用保険、所得税、住民税を引かれると月20万円ほどが手元に残るだけだ。賞与も年2回だが1ヶ月半出ればいいほど。三十万円以下だ。二人で折半している家賃を払うと月15万円未満しか残らない。京急沿いや東急沿いで駅から離れていればもっと安い物件も有るが、JR大井町を使って通勤するのが東京駅にもっとも近い。
尾崎と神田駅で分かれた優子は大井町からの暗い線路沿いを歩いて部屋に帰ってきた。上を見上げると部屋の照明はついていない。智子はまだ帰ってないんだな、と優子は思う。まだ9時ちょっと過ぎ。今日は彼女はガールズバーのバイトか婚活にでも行っているんだろう。郵便受けを見た。封書の請求書ばかりだ。彼女は階段を2階に上がる。奥の角部屋だ。部屋の照明をつけた。
優子の後ろを歩いてきた中年の女性がいた。優子がマンションに入るのを横目でちらりと見る。スマホをいじりだして立ち止まった。優子の部屋が明るくなったのを見た。この子はあの部屋に住んでいるんだなと女は思う。女はスマホを見ながら品川方面に歩いていった。
その女の後ろを数十メートル離れてサラリーマン風の男も同じ道を歩いていた。男も優子のマンションを横目でちらりと見たがそのまま女と同じ方向に歩み去った。
優子はマンションに入ると智子の部屋を通って自分の部屋に行く。優子と智子の部屋は両方とも線路向きのサンルームに出られる。バルコニーもガラスの引き戸があるので洗濯物が雨に濡れる心配がないのが良いポイントだ。下着ドロの被害に遭うこともない。バルコニーと言っても幅90センチほどだ。
優子は自室で部屋着に着替えた。エアコンをつける。部屋のカーテンを引いて明かりが外にもれないようにする。キッチンから灰皿を持ってくる。サンルームに出てガラスの引き戸を開けた。
ヨイショッと言ってサンルームの床に体育座りをする。タバコに火をつけた。外と隣近所から見えないようにした。喫煙がバレるとうるさいのだ。智子はタバコを吸わないからキッチンの換気扇の下で吸うわけにもいかない。おまけに換気扇の排気は外廊下に出るので臭いがする。
智子がいない部屋はいつもは寒々としている。部屋をシェアして良かったと思う。これが一人だったら耐えられない。もちろん、一人暮らしだったらもっと駅から遠い六畳一間のアパートを借りなければいけないだろう。