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【『梅雨の夜、螢は光る』】雨上がりのアトリエにて

皆さま、こんにちは。或 るいと申します。
いつも、私の紡ぐ言葉の欠片たちに温かい眼差しを向けてくださり、本当にありがとうございます。画面の向こう側から届く皆さまの優しい気配が、私の背中をそっと押してくれているのを感じる毎日です。

本日は五月二十四日。
日中は、もう夏の入口を思わせるような、まぶしい陽射しがアスファルトに踊ることも増えてまいりました。開け放った窓からは、ほんのりと青さを増した風が吹き込んできて、部屋の隅に積まれたままの本のページを、ぱらぱらと悪戯っぽくめくっていきます。まだ、あの世界から音が消えたような、静かで湿った雨の季節には少し間があるようですが、それでも空の高さや雲の流れる速さに、ゆるやかな季節の移ろいを感じずにはいられません。

さて、この度、新しい物語『梅雨の夜、螢は光る』を、皆さまの元へとお届けできることになりました。
この物語は、どこにでもあるような都会の片隅で、ふと息を潜めるようにして生まれた小さな灯火のようなものです。それは、賑やかな街の喧騒から逃れて辿り着いた、真夜中の静寂の中にだけ見つけられるような、秘密の場所。あるいは、誰にも見せることのない日記帳に綴られる、言葉にならない想いの断片。そんな、現代という時代だからこそ感じ得る、どこか心許なくて、でも切実に温もりを求めてしまうような心の揺らめきを、そっと掬い上げたいという気持ちから生まれました。

主人公の螢(ほたる)が、午前2時という、世界が眠りにつく頃に出会う不思議な存在「カゲロウ」さん。彼との言葉のやり取りは、もしかしたら、皆さまが心の奥底にしまっている、淡い記憶や、誰にも話せない小さな願いと、どこかでそっと重なり合う瞬間があるかもしれません。
画面越しの、触れることのできない繋がり。でも、だからこそ育まれる純粋な信頼。そして、その曖昧さの中で見失いそうになる自分自身と、再び向き合おうとする小さな勇気。そんなものを、まるで薄いヴェールを幾重にも重ねたような、淡く霞んだ色彩の中に描き出せたらと、今はただ願うばかりです。

この物語が、ふとした瞬間に皆さまの心に寄り添い、現実の喧騒をほんの少し忘れさせてくれるような、そんな止まり木のような存在になれたなら。あるいは、読み終えた後に、いつも見ている風景がほんの少しだけ違って見えるような、そんな小さな変化のきっかけになれたなら、書き手として、それ以上の喜びはございません。

まだ生まれたばかりの、ささやかな物語ではございますが、これから螢がどのような感情の波に揺られ、そして、どのような光を見つけていくのか。どうぞ、この『梅雨の夜、螢は光る』という、少しばかり奇妙で、けれどどこか懐かしい世界にも、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

日ごとに緑が深まる季節、皆さまもどうかお健やかにお過ごしくださいませ。そして、また物語の世界でお会いできることを、心より楽しみにしております。

或 るい

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