「動物虐待の疑いで容疑者を逮捕。容疑者は自分のSNSで個人情報を誤って流し——」
午後23時のニュースに、俺はテレビを振り向いた。
(……ああ。そうか)
犯人の顔を、知っている気がした。
皮膚が変色してボロボロの顔。
こいつがちまきを殺したということも、心のどこかでこうなると知っていたような気も。
「あ、SNSで炎上してたやつだ。悪いことすると自分に返るのね。こいつ、絶対許せない」
隣で、最近付き合ったばかりの彼女が顔をしかめる。
彼女にちまきの話をしたことはない。
話してショックを与える必要もないと思っていたし、いつか話すとしても今じゃないと思っていた。
「明日の休み、どっか行くか?」
空気を変えるように提案してみれば、彼女は少し考えて、ふっと笑う。
「直哉、疲れてるじゃん。無理しなくていいよ。なんか美味しいもの作るから、明日は家でゆっくりしよ?」
茶色に染めた髪に縁取られたその笑顔に、一瞬だけちまきが重なって見えた。
(……似てるな)
仕草も、声のトーンも違うのに。
似ても似つかないはずなのに。
「……じゃあ、よろしくお願いします」
「はい。期待してて」
彼女が嬉しそうにうなずく。
虐待犯のニュースは、もう耳に入らなかった。
ただ静かな幸福が、じんわりと胸に広がる。
悲しみは消えない。
でも、ちゃんと前を向ける。
ちまきとハナに約束した以上は。
(有り難うございます。これで、生きていけます)
誰に向けたのか分からない感謝が、静かに心から零れた。
どこかで風車がカラリと回ったような気がしたが、それはグラスの氷が溶けた音かもしれない。