今回は、兼好法師に憧れた架空の随筆家・藤原宗春の物語です。
宗春は、最初は花や月、老いや無常を書こうとします。
けれど、どうしても筆が向かうのは、そういう上品なものではありませんでした。
葬送の場で形見を数える指。
説法中に菓子へ目をやる僧。
人前では品よく振る舞いながら、腹の音ひとつ隠しきれない人間。
そして、死を前にしても気になってしまう、見舞いの僧の鼻毛。
宗春はやがて「放屁庵俗丸」と号し、自分の目が見てしまう俗や恥を、逃げずに書くようになります。
この作品で書きたかったのは、いわゆる「残った名作」ではなく、
読まれたかもしれないのに、正面からは褒められず、いつの間にか消えていった作品のことです。
面白いと思われても、面白いとは言われない。
読まれていても、作者には届かない。
残る価値がなかったわけではないのに、守る順番が回ってこない。
そういう、創作物の苦さのようなものを書きました。
よかったら、お付き合いください。
https://kakuyomu.jp/works/2912051599139277144