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⚓「新奴隷商人 ア・ヌンナック編」、第6話 ア・ヌンナックⅡ号の墜落 改訂版

⚓「新奴隷商人 ア・ヌンナック編」、https://bit.ly/3RFeUMj
 10万年前に起こった知的生命体がなぜ地球に飛来し人類の祖先を産んだのか?
 プロローグ、クローヴィス彗星
 https://x.gd/LRlLK
 ア・ヌンナック編
 第1話 ア・ヌンナック年代記
 https://x.gd/601Oy
 第2話 ア・ヌンナックⅡ号の内部構造
 https://x.gd/ndpi8
 第3話 ア・ヌンナックⅡ号の駆動方式
 https://x.gd/4ZPcO
 第4話 惑星間航行船エルピス(Elpis)Ⅰ号、Ⅱ号
 https://x.gd/JDADu
 第5話 ア・ヌンナック人の形態の変遷 改訂版
 https://x.gd/Nnu0w
 第6話 ア・ヌンナックⅡ号の墜落 改訂版
 https://x.gd/3SldR

巨船は、ワームホール航法を用いて銀河系を縦横に移動し、未知の恒星系を探査する使命を帯びていた。しかし、その最先端の技術が、予期せぬ悲劇の引き金となろうとしていた。

 地球時間、紀元前10,765年。ア・ヌンナックⅡ号は、銀河系の辺境、太陽系への探査任務のさなか、未曾有の危機に直面していた。直径20キロ、長さ50キロ、総質量31.1兆トンのこの巨大なシリンダー型恒星間航行船は、ア・ヌンナック星の10万年にわたる文明の結晶であり、科学と生物工学の粋を集めた誇り高き存在だった。


 任務の最終段階で、ア・ヌンナックⅡ号は太陽系外縁へのワームホール航行を試みていた。ワームホール生成装置は、負のエネルギー(エキゾチック物質)を用いて時空を折り畳み、シャクトリムシ航法で空間を畳み込む仕組みだった。この技術は、ア・ヌンナック文明の最高峰であり、理論上は安定した超光速移動を可能にしていた。だが、この日、装置は致命的な異常をきたした。

 艦橋は、赤と青の警告灯が点滅し、けたたましい警報音が響き渡る混乱の坩堝と化した。司令長官ゼウス提督は、戦闘経験豊富な老練な指揮官だった。彼は、制御パネルの三次元ホログラムに映し出された空間歪曲の異常値を見つめ、額に汗を浮かべながら叫んだ。「ワームホール出口が歪んでいる!ホーキング放射が急増し、空間座標が崩壊するぞ!」彼の声は、艦橋の重苦しい空気を切り裂いた。

 副提督ヘラは、ゼウスの右腕として冷静さを保ち、汗を拭いながら即座に応じた。「緊急遮断を!バイオリアクターの出力を下げろ!」彼女の指示は明確だったが、状況はすでに制御の範疇を超えていた。副航海長イカロス中尉は、若く野心的なバイオAIパイロットだった。彼は操縦桿を握りしめ、バイオAI知性体を通じて船の神経系に接続し、必死に制御を試みた。だが、ホログラム画面に映るワームホールのトンネルは、不気味な赤い脈動を繰り返し、崩壊の兆候を示していた。「エネルギー流量が制御不能です!」イカロスの声は震え、焦りが滲んでいた。

 ヘラが叫び返す。「イカロス、落ち着け!手動で遮断しろ!」だが、彼女の言葉が届く前に、事態は急転した。イカロスのわずかな操艦ミスが、エネルギー流量の急増を招いた。ワームホール生成装置の内部で、負のエネルギーが不安定に振動し、ホーキング放射が爆発的に増大。轟音とともに艦体が激しく揺れ、船内の重力場が一瞬不安定になった。乗組員たちは床に投げ出され、制御パネルの火花が散った。亜空間内で船体が強制的に現実空間に引き戻され、31.1兆トンの巨体は太陽系の重力場に投げ出された。

 ゼウス提督は、揺れる艦橋で体を支えながら状況を把握した。「太陽系内に放り出された!重力場に捕らわれている!」彼の声には、絶望と決意が混在していた。ホログラムには、太陽の巨大な姿と、船体がその引力に引き寄せられる軌道が映し出されていた。イカロスが絶望的な報告を上げた。「質量が大きすぎる!推進力では軌道修正は不可能だ!」

 機関長アテナ大佐は、バイオリアクターの制御室で必死に操作を続けた。彼女は、人工培養脳細胞とニューロチップが織りなす複雑な制御系統を調整し、36基の電磁推進装置を最大出力で作動させた。

 バイオリアクターは、有機物を分解して化学エネルギーを電力に変換する仕組みで、ワームホール航行の心臓部だった。だが、31.1兆トンの巨体を動かすには力不足だった。アテナの額には汗が光り、彼女の声は切迫していた。「ゼウス提督、推進力の限界です!リアクターの培養液が過熱で劣化し始めています!脱出しかありません!」

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