砂の囁きの重みに屈し、複雑に入り組んだ回廊、地下墓地、そして古代の宝物庫が広がる、滅びしシュテルド帝国の最深部。そこには、不気味な「何か」が息を潜めている。石壁にはその皮膚の饐えた臭いが染み付き、壁に掛けられた灯火の鋭い光は、燃え盛る輝きを締め付けるように脈打つ血管の下で、絶え間なく明滅している。
「微睡む巨躯」、あるいは「トゥシャドレム」と呼ばれるその存在は、滅ぼされたシュテルドの戦士たちが一つに融合し、巨大な生命体と化した、人間の純粋な憎悪の源泉である。驚くべきことに、その最大の弱点は、文字通りダンジョンのすべての壁を覆い尽くす広大な肉体のどこかに隠された、たった一つの「混沌の器」であるという。トゥシャドレムはそれを出自の狂気ゆえに守ろうともせず、それが何であるかさえ、おそらく理解していない。
トゥシャドレムの巣食う地下へと足を踏み入れる者にとって、最大の脅威となるのは、その魂そのものである。彼は肉体と記憶から愛する者たちの身体を創り出し、彼らがもう存在しないという怒りと絶望から、周囲のすべてを呪いながら、果てしなくそれらを貪り喰らう。そして、不完全な幻影の後に残された骨を自身の肉体の盾とし、動かぬ骸骨の白い外殻を、制御不能な意思への永遠の従属へと縛り付ける。
生ける骸骨たちは、まるで彼の名を唱和しているかのようだ。影からは、カチカチと反響する顎の鋭い音が聞こえてくる。しかし、地下世界の心臓である巨躯そのものは沈黙を守っている。なぜなら、その姿こそが、シュテルドの深淵に広がるあらゆる恐怖の言葉そのものだからである……。
〜 魔物誌『砂の書』より抜粋 〜