『ダンテラ』カクヨム掲載100話突破、ありがとうございます。
本編では説明する機会のなかった設定や、何気なく流されてしまった台詞の意味などを、登場人物に聞いてみる不定期企画です。
記念すべき第1回は、0005話でトウヤが口にしていた「ああいうのは効率がいい」という台詞について。
それでは、どうぞ。
◇
「はい、始まりました!」
「何が?」
「『ダンテラ』カクヨム掲載100話突破記念、特別企画――『詩織がトウヤさんに聞いてみた』のコーナーです!」
「聞いてないんだが」
「ですから、これから私が聞きます」
「そういう意味じゃねえよ」
「この企画では、本編で説明されなかったことや、説明されていても少し分かりにくかったことを、読者の皆さんに代わって私が質問します」
「いつからお前が読者代表になったんだ?」
「先ほど作者さんから任命されました」
「作者?」
「細かいことを気にすると進まない場所だそうです」
「ずいぶん都合のいい場所だな」
「近況ノートですから」
「近況ノートって何だよ」
「気にすると進みません」
「二回目だぞ、それ」
「なお、この企画はカクヨム掲載100話までの内容を基準にお送りします」
「それより先のことを聞かれたら?」
「答えてくれますか?」
「答えねえよ」
「安心のネタバレ防止設計ですね」
「俺が面倒だから答えないだけだけどな」
「結果が同じなら問題ありません」
「お前、思ったより雑だな」
「それでは、最初の質問です」
「もう始まってたのかよ」
「0005話で、美奈さんが回復魔法らしき力を見せた際、トウヤさんはこう言っています」
詩織は手元の紙へ目を落とした。
「『回復系っぽい。ああいうのは効率いいんだよ』」
「よく覚えてんな、そんな昔の台詞」
「本編を読み返しました」
「お前、まだ登場してない頃だろ」
「登場する前の話を読んではいけないという決まりはありません」
「そういう問題なのか?」
「そして、この“効率がいい”という言葉ですが、100話まで読んでも具体的な説明がありません」
「作者が忘れてたんじゃねえの?」
「そういう身も蓋もないことを言わないのがお約束です」
「説明する機会を逃しただけだろ」
「ほぼ同じことを言っています」
「で、何が聞きたいんだ?」
「何が、どのように効率的だったのでしょうか?」
「回復役が一人いれば、何人も長持ちする」
「人間に対して“長持ち”という表現を使わないでください」
「じゃあ、活動できる期間が延びる」
「急に報告書みたいになりましたね」
「お前が言い直せって言ったんだろ」
「もう少し詳しくお願いします」
「面倒くせえな」
トウヤは頭を掻いた。
「五人でダンジョンに入ったとして、一人が怪我したらどうなる?」
「怪我の程度によりますが、治療のために撤退します」
「その日の探索は終わりだ。重傷なら、しばらく潜れない。死んだら二度と来ない」
「はい」
「回復役がいれば、そこで治せる。軽い怪我なら探索を続けられるし、重い怪我でも生きて帰れる可能性が上がる」
「つまり、回復役一人がパーティ全員の探索時間と生存率を高めるわけですね」
「そういうことだ」
「生きて帰れば、またダンジョンへ来ます」
「何度も来る奴は経験を積む。前より強くなる。深いところまで来るようになる」
「ダンジョンの魔素環境へ触れる時間も長くなる」
「一人の回復役を残しておけば、そいつだけじゃなく、周りの何人もまとめて育ちやすくなる。だから効率がいい」
「なるほど」
詩織は手元の紙に何かを書き込んだ。
「一人の回復役が、複数の探索者の生存、成長、継続的な入域を支える。ダンジョンマスターの視点では、同じ人数を何度も入れ替えるより、経験を積んだ探索者が長く活動する方が効率的ということですね」
「何で俺より綺麗に説明してんだよ」
「トウヤさんの説明を、そのまま載せると印象が悪いので」
「人間を長持ちさせるって言っただけだろ」
「そこです」
「分かりやすいだろ?」
「分かりやすさと印象のよさは別の問題です」
「注文が多いな」
「では、トウヤさんは回復系の力を持つ人なら、全員助けるのでしょうか?」
「助けねえよ」
「即答ですね」
「俺は救助隊でも警察でもない。勝手に潜って、勝手に怪我して、勝手に死ぬ奴らまで面倒見てられるか」
「では、美奈さんを助けた理由は?」
「助ける手間がほとんどかからなかった。回復系なら、あそこで死なせるより残した方が得だった。あいつらのやり方も気に入らなかった」
「きちんとした理由が三つもありました」
「あと胸」
「四つ目で、それまでの説明を台無しにしないでください」
「重要文化財だったからな」
「現在も指定されていません」
「世界遺産級だぞ」
「推薦もされていません」
「見る目がねえな」
「どこへ推薦するつもりですか」
「それはこれから考える」
「考えなくて結構です」
詩織は一度咳払いをした。
「つまり、回復役だから無条件で助けたのではなく、助けるための負担が小さく、将来的に役立つ可能性があり、襲っていた人たちにも腹を立てていた。そこへ個人的な好みが加わったということでよろしいですか?」
「大体それでいい」
「個人的な好みの割合は?」
「かなり大きい」
「聞かなければよかったです」
「お前から聞いたんだろ」
「それにしても、結果的には助けて正解でしたね」
「まあな」
「美奈さん、今後も大活躍ですしね」
「今後?」
「それ以上はネタバレになるので秘密です」
「俺に隠す意味あるのか?」
「読者の皆さんに向けて言っています」
「誰を見て話してるんだ、お前」
「カメラです」
「そんなもん、どこにもないぞ」
「配信では、見えないカメラを見る技術が必要だと聞きました」
「誰に聞いたんだよ」
「動画で見ました」
「便利だな、動画」
「ずっと部屋で過ごしていましたから、こういうことには詳しいんです」
「変なところで説得力出すなよ」
「というわけで、第1回は『ああいうのは効率がいいとは、どういう意味なのか』についてお送りしました!」
「お送りしたって、どこに?」
「近況ノートです」
「番組ですらねえじゃねえか」
「気分の問題です」
「全部それで押し切るつもりか?」
「100話まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます」
「急に真面目になったな」
「大事なところですから」
「まあ、それはそうだな」
「これからも『ダンテラ』をよろしくお願いします」
「よろしくしてやってくれ」
「それでは皆さん、チャンネル登録と高評価をお願いします!」
「何それ?」
「一度は言ってみたい台詞トップ50くらいに入るものです!」
「思ったより順位低いな」
「上位は、人生で一度しか使えないような台詞が多いので、軽率に消費できません」
「たとえば?」
「『ここは私に任せて、先へ行ってください』とか」
「お前が言ったら洒落にならねえから、絶対やめろ」
「では、カクヨムの作品フォローと★評価、応援コメントをお願いします!」
「そっちは急に現実的だな」
「チャンネル登録はできませんから」
「最初から言うなよ」
「それでは、次回もお楽しみに!」
「次回はいつだ?」
「未定です!」
「不定期って便利だな……」