星脈の風渡り
https://kakuyomu.jp/works/822139841292040200AIユミナは119番をかけられない
https://kakuyomu.jp/works/822139841280930067両者ともコンテスト作品ということもあり、思い切ってテンプレートを一切意識しない作風で短編を書いてみました。その結果、これまでの長編作品よりも明らかに良い評価をいただき、嬉しさと同時に戸惑いも感じています(汗)。
両作品とも、今後の方向性を探るテストケースとして制作したもので、タグにある通り、生成AIによる本文利用を前提とした作品です。
ただし、同じ「AI本文利用」であっても、両作品ではまったく異なるアプローチを採っています。
「星脈の風渡り」では、まずストーリーや設定を考案し、その後に長文の描写表現を自分で作成しました。それに対してChatGPTに一文ずつ表現の置き換え候補を提示させ、それらを組み合わせたり修正したりしながら、最終的に高推論モードでリファレンス化し、文章として反映させる、という方法論を用いています。
結果として、自分で書いた原稿量は本文の何倍にもなっており、最終的な言葉選びも自分の感性に委ねているため、AIの「生産性」というメリットとは完全に逆行した実験作になっています(汗)。
ただし、その分、これまで自分の中にはなかった語彙や表現を使えるようになってきており、そういう意味では、まさしく「AI本文利用」と言える手応えも感じています。
一方で、「AIユミナは119番をかけられない」では、作中キャラクターであるユミナのペルソナを反映させたカスタムGPTを実際に作成し、その出力をセリフ表現として採用する手法を取りました。
シチュエーションや視点といった要素を、より現実の生成AIの在り方に近づける意図で、AIの出力文章を積極的に取り入れています。
そのため、主人公の年齢を自分に近づけ、TRPGやゲームといった趣味も共通するものに設定し、AI利用もそこから自然に入る形にしたのは、その狙いからです(汗)。
個人的に、作者本人である私と作中の主人公との最大の違いは、「TRPGに夢中だった学生時代」以降に、
「MMORPGの世界に飛び込んだかどうか」という点にあると考えています。
私は、MMORPGの世界に飛び込んだ側の人間です。そのため、「ゲーム内のキャラクターも人間である」という感覚を体験しており、AIとの会話に対しても忌避感がなかったのではないか、という自己分析をしています。
(今でこそ珍しくありませんが、MMORPGをきっかけに結婚した当時はまだ珍しく、「PCと結婚したのか」「結婚してもチャットで会話するのか」といった揶揄をよく受けました。ネット上のチャットから始まる結婚や恋人関係は、まさに今で言う「AIと結婚した」かのような扱いだったのです。)
一方で本作の主人公は、MMORPGに飛び込まなかった側の人間です。一人で行う趣味は一人で完結するもの、という経験しか持たず、「一人でやる趣味を他人と共有する楽しさ」を知らないまま生きてきました。
その結果、生成AIとの関わりによって初めてその楽しさを知り、あまりにも楽しいがゆえに恐怖を覚え、距離を取ろうとしてしまう――そうした心理を想定して描いた作品となっています。
何かと話題になる生成AIですが、その時代における二つの異なるアプローチとして、両作品を楽しんでいただければ幸いです。