最後の異世界転生譚 ――Echoes Beyond the Aurora Manuscript――
https://kakuyomu.jp/works/1681862217100678216257話 顔を覚えておくように
朝の身支度を済ませるアーミラとガントールの前にオロルが現れ、後方に残るアーミラへの忠告と激励を与える。
その後、継承者たちはセルレイの邸に仕える兵士や従者たちとの顔合わせに臨み、兵士たちが整然と名乗りを上げていく中、アーミラはふと、仮面をつけた何者かの存在を思い出し、質問する。
その瞬間、空気は一変。伯爵の表情が曇り、従者たちに緊張が走る。
徐々に日常から非日常へと移り変わる、転換点を予感させる静かで重たい空気。
見てはいけないもの、存在してはいないものを見たような気味の悪さで仮面の男を描き、アーミラのリアクションが読者視点を担う。
58話 こいつの名前は
オロルの追及によって、仮面の男『イクス』の存在が徐々に明らかになっていく。その扱いは不可解なほどぞんざいで、どこか緊張感が走る。
一方、従者の紹介が進み、アーミラは笑みを見せない若い侍女『ナル』に目を留める。どこか自分に似たその少女を見つめるうち、アーミラは突如過去の記憶を追体験する――それは幼い頃、誰かに抱かれながら何者かに託された記憶だった。
記憶を取り戻しつつある彼女は、邸に来た意味をあらためて確信するのだった。
スペルアベル平原編のエピソードキャラの名前が明かされました。
物語はここから先、オロルとガントールが不在になるため、展開を先に進ませるためのキャラを動員しないといけません(逆に多すぎても困るのでオロルとガントールを外したとも言える)。
アーミラの初めの目標自体は割と順調に達成されようとしています。記憶を取り戻すことで、読者的にも進展の手ごたえを感じて、ストレスなく先へ読み進めるのではと考えてこの構成にしました。
59話 ここから先は命がいくつあっても足りん
オロルはアーミラに『恐れも必要だ』と語り、継承者の重荷と覚悟を示したのち、ガントールと共にラーンマクへと向かう。
アーミラは伯爵の邸に一人残される。静かな日々が続き、ただ飯を食う日々に待ったをかけたのは炊事場を取り仕切る少女ナル。「穀潰し」とストレートに言い放たれ、アーミラは涙ながらに謝罪する。彼女はお使いで働くことで、再び歩み出そうとするのだった。
『働かざる者食うべからず』この世界で生きるためには、たとえ継承者でもただ飯は食わせられない。
余談ですが、日本よりも貧しい国で数日過ごしたことがあります。その時の「余裕のなさ」とか、台所事情をこの物語で活かしてみました。ナルという幼い少女が食い扶持のために働く姿も、国外では珍しいことではないですね。
60話 涸れてますね
アーミラは買い出しへ出かけることになるが、玄関には仮面の男イクスが立っていた。なんとなく気まずい彼を避けるようにウツロを頼り、結局、二人の護衛を連れての買い出しに出発することに。
継承者であることを隠すため略装していたが、貨幣の持ち合わせがないことに気づき困惑する。助け舟を出したのはイクスだった。
帰り道、アーミラはふと見つけた枯れ井戸に足を止める。何の変哲もない井戸に彼女は懐かしさを感じる――それは過去の自分と『お師様』の記憶の断片だった。
日常回の皮を被った内面回想と関係性進展のエピソードです。
イクスというキャラクターを描きつつ、物語のトーンを明るめに調整しています。
それと、露骨に恋愛描写は描いていませんが、アーミラとウツロの距離は改善されています。
61話 スークレイ女伯
邸に戻ってきたかと思われたガントールだが、現れたのは瓜二つの別人――彼女の妹であり、ラーンマク辺境の領主スークレイ女伯だった。
彼女は前線の戦況悪化を理由にセルレイの邸に避難し、同時にオロルからの伝言を携え、拠点指揮を引き継ぐことを宣言する。
アーミラは晴天の霹靂のごとくその命令を受け、さらには「期待していません」と冷たく言い放たれる。
日常回で持ち上げたトーンのまま、ショックを与える新キャラ『スークレイ』。ガントールの妹で、その性格は刺々しい。
彼女に認められる存在にならなければ戦士として認められない。前線出征も、生きて帰ることも夢のまた夢……アーミラにとっては乗り越えるべき壁です。
舞台は整いました。