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08 吊るし人 について

最後の異世界転生譚 ――Echoes Beyond the Aurora Manuscript――
https://kakuyomu.jp/works/16818622171006782162


52話 敵は手強いようじゃな
スペルアベル平原に遅れて到着したアーミラとオロルは、トガを撃退した痕跡を発見する。ガントールたちが無事であると判断し、平原領主の邸を目指す。
国とは言い難いこの地には独自の逞しさがあり、アーミラはその在り方に何かを感じ取る。そして、夜、ついに継承者一行が再合流を果たし、次なる戦いの幕開けが示唆される。

戦場の後、まるで冷めた鉄のように静まり返ったスペルアベル平原。アーミラの目を通して人々の生活を描写しています。ガントールの戦闘シーンでは端折られていたので。


53話 わしの予想では
スペルアベルの領主ギルスティケー伯爵に謁見したオロルたちは、平原を拠点とすることを直談判する。唐突かに思えた要求の裏には、オロルの「ラーンマク失地予測」があった。それを受けた伯爵との一進一退の会話は、紫煙の中で濃密な政治的駆け引きへと移行していく。

物語が戦略と政治の段階へと移行した回。
喫煙室という閉じた空間を舞台に、会話劇の静かな戦いが展開される。
領主の服装や仕草、煙の漂う空間、椅子の色まで明確に視覚化され、映画のような没入感と絵作りを意識しました。


54話 この邸は好きに使いなさい
前話に続いてスペルアベルの喫煙室で伯爵と作戦会議を続けている。オロルは集落襲撃の背景に長期潜伏した禍人の存在を示唆し、三体の強力な敵が前線突破を狙っていると告げる。
灰皿で地図を描きながら敵の動きを説明。オロルとガントールはラーンマク防衛に向かい、スペルアベルの邸宅を後方拠点にするよう要請する。

この回は、剣も魔法も使われない言葉による駆け引きのパートです。
オロルは理詰めの思考キャラなので、矛盾がないか、納得できる理由があるか、作者の私は無い知恵を絞ってなんとか形にしました。


55話 幽霊を見た?
ウツロが屋根の上で孤独に佇む。その姿をアーミラが見つけ、再び対話を交わす。集落襲撃の件について彼の関与を疑い始めていた。「気付いた」のではなく「知っていた」のではないか?という疑念を抱えながら、ウツロの返答に静かに対峙する――。

スペルアベル編のエピソードは『信頼』についてをテーマにしています。
疑うべきものは誰だ? 信ずるべきは何だ? 貫くべき矜持はどこにある?
……そんな揺らぎの中で、何を見出すかを描きたいと思っています。


56話 弁明しても意味はない
アーミラの疑念に対し、ウツロは「見えざる声に導かれた」と弁明する。アーミラは彼の説明に戸惑い、ウツロ「行動で示す」としてその場を去る。
その後、ガントールとのやり取りが描かれる中で、アーミラは後方に残されることへの無力感と葛藤を深めていく。
ガントールは戦場とは何かを静かに語り、戦いに慣れていくことの必要性と残酷さを伝える。

静かに感情を描いたタメの回。ウツロの怒り、無力感に囚われるアーミラ、ガントールの静かな語り口から滲む、戦士としての達観。等、人間関係の複雑さで世界の難しさ(設定の話ではなく、生きることそのものの難しさ)を描いています。

ネタ的な話ですが、転生モノの主人公が戦地でいきなり命のやり取りをするのは納得できていなくて、兵役のリアルさ、「殺す」ことの心理的ストレスについてもこの作品は真正面から考えようとしています。

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