紅き翼の巨獣・ワイバーンを討ち果たした佐々木小次郎。激闘の興奮が冷めやらぬ中、小次郎は少年の姿をした老学者アラン・パスコより、逃れられぬ知的な追求を受けることとなります。
「お主、魔法が見えるのかのう」
パスコの鋭い眼差しが、小次郎が秘匿してきた「天眼」の真実に迫ります。小次郎が視認していた幾何学的な「模様」――。それは、魔法陣とは異なる現代の術者には決して捉えられぬ、失われし古代エルフの大賢者の紋であったことが明かされます。
ここから物語は、異世界の魔法体系を紐解く学術的な展開へと深化してゆきます。パスコが説く「四因子理論」――空間構造、起動言語、意図統合、供給経路。そして、魔法の属性が織りなす相克の理である「環状打破則」と、術を無効化する「対消滅の理」。
さらに、術者の認知を攪乱する高度な戦術的欺瞞 囮呪文(デコイスペル)の実演を経て、小次郎は自らの左目が「真の魔法の姿」を捉えていることを自覚します。
「魔法による対戦は欺きの歴史でもある」
パスコの言葉を几帳面に日記へと書き留める小次郎。日ノ本の侍が、剣技に加えて魔法の法則という新たな武器を手にし始める、記念碑的なエピソードです。
ホットミルクを飲みながら語る風変わりな賢者と、未知の学問に翻弄されつつも真剣に筆を走らせる侍。二人の奇妙な師弟関係にも似た交流を、どうぞお楽しみください。