https://kakuyomu.jp/works/2912051598609369556/episodes/2912051598609522416イリス・バレットは、『傾国の美少女は恋がしたい!』のヒロイン。
辺境の村に生まれた、あまりにも美しい少女である。
その美貌は祝福というより災厄に近く、村から王都へ「献上物」として差し出され、後宮に納められてしまう。王や王族たちは彼女の顔に価値を見出すが、イリス自身は王族の品のなさと、籠の鳥のように扱われる生活を生理的に受け付けられなかった。
後宮で慰めとして与えられた猫だけを頼りに、イリスは王宮から逃げ出す。
追っ手から逃れるため、顔に泥を塗り、髪を切り、傾国の美少女であることを隠そうとするが、それでも男たちは彼女に言い寄ってくる。逃げ、怒り、喧嘩を繰り返すうちに、いつしか彼女は付け焼き刃の戦い方を覚えていく。
だが、しょせんは村娘。
本物の戦士でも盗賊でもないイリスは、酔った男に襲われかけたところを盗賊剣士アル・スラメに救われる。そこから彼女は、アル、ラスノ、オルムという三人の冒険者と関わり、自分の自由を取り戻す旅へ踏み出していく。
性格は明るく、健全で、恋に憧れる普通の少女。
ただし、その「普通」が彼女にとってはとても遠い。美貌のせいで人から所有物のように扱われ、村からも王宮からも都合よく利用されてきたため、イリスにとって恋とは、誰かに買われることでも、飾られることでも、奪われることでもない。
自分の意思で誰かを好きになること。
自分の足で好きな場所へ行くこと。
自分の人生を、自分のものとして選ぶこと。
それがイリスの物語の核である。
戦闘面では、初期のイリスはかなり頼りない。武器の扱いは未熟で、細い腕ではまともに敵を倒せないため、アルから短剣を持たされ、蹴りを鍛えられる。素手で暴れる喧嘩殺法に近く、戦士職ではあるが、技術はまだまだ未完成。軽装で身を守りながら、必死に生き延びるタイプの前衛である。
後に、彼女を助けていた猫がただの猫ではなく、精霊猫キャスパリーグであることが明らかになる。
イリスは自覚のないまま髪を代償として契約し、精霊語魔法の素質を得ていく。つまり彼女は、ただ守られるだけの美少女ではなく、仲間と旅をする中で少しずつ「自分の力」を手に入れていくヒロインでもある。
イリスの魅力は、傾国級の美貌と、本人の中身の素朴さのギャップにある。
男たちは彼女を美女として見る。王宮は彼女を献上品として見る。村は年貢代わりの価値として見る。だが、イリス本人はただ、普通に恋をして、普通に笑って、普通に生きたいだけの少女なのだ。
その普通を取り戻すために、彼女は逃げる。
逃げた先で仲間と出会い、戦い方を覚え、故郷へ戻り、そして最後には自分の意思で旅立つ。
イリス・バレットは、“美しすぎるせいで人生を奪われた少女”が、“自分の恋と自由を取り戻す”ために冒険者になる物語の中心人物である。