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【体験版】転生特典の豪華宇宙船を即売却して、ボロ貨物船を買って最強ライフを過ごしてみた。

https://kakuyomu.jp/works/11054822665212319546

プロローグ:前提条件の共有ミス

視界を埋め尽くしたのは、網膜を焼き切るような警告色(アンバー)の奔流だった。

『――警告。軌道予測誤差、許容限界を超過。衝突予測時間、〇・三秒』

コンマ数秒の間に、計器がけたたましい悲鳴を上げる。
減速Gが全身の骨を軋ませ、シートの拘束ベルトが肉に食い込んだ。
目の前に迫るのは、巨大な衛星都市の滑らかな外壁――ではなく、その進入禁止宙域に突如として躍り出てきた、流線型の異様な機体。開発コードすら登録されていない、軍かどこかの高機動試作機だった。

「っ……ミスった」

操縦桿を握り潰さんばかりに力みながら、死の直前の極限状態において思考は異常なまでの加速を見せていた。
最初は、操縦支援AIの判断ミスを疑った。
だが、網膜ディスプレイを滝のように流れ落ちるログを見た瞬間、思考は冷徹な事実へと即座に行き着く。

(違う。AIの演算ミスじゃない。……前提条件の共有ミスだ)

衛星都市の管制区画周辺は、多層型航行管理システムによって絶対安全が保証されている。
デブリの飛散確率、民間船の巡航ルート、相対速度の限界値。
AIは、与えられた「外乱要因ゼロ、事故発生率〇・〇〇〇〇%」という完璧な前提に基づいて、寸分の狂いもない最短・最適ルートを弾き出し、忠実にスラスターを吹かしていたのだ。

狂っていたのは、AIではない。
その完璧な前提条件の外側から、絶対に存在するはずのないイレギュラー――未登録の試作機が飛び込んでくるという事態を、システム全体に定義していなかった「設計側の傲慢」だ。

(絶対安全という前提が共有されていなけりゃ、どれだけ優秀な知能を積んでたって、ただの盲目な計算機だろうが……!)

AIは正常に動作したまま、死ぬ。
技術者としてあまりにも苦く、あまりにも救いのない設計の破綻だった。

すでに回避マニューバを打つための質量も、推進剤の噴射時間も残されていない。
コクピットの装甲越しに、相手機体の推進炎が青白い巨人の手のように迫る。

破断する隔壁。
吹き飛ぶ計器パネル。
真空が空気を奪い去り、強烈な光が視界のすべてを白く染め上げていく刹那。

死を目前にした技術者の脳裏に、ふと、あまりにも場違いで俗っぽい願望がぽっかりと浮かび上がった。

(……あ~あ。もし生まれ変われるってんならさ)

もう、他人の作った穴だらけのシステムに振り回されて死ぬのは御免だ。
誰にも文句を言わせない、自分の手で組み上げた頑丈な機械と確かな腕っぷしで――。

(次は、俺つえーみたいな人生を送りたいな……)

パチン、と意識のスイッチが切れた。

――そして。
目を覚ました時、目の前に広がっていたのは見知らぬ異世界であり、転生特典として押し付けられた「ピカピカの超豪華最新鋭宇宙船」だった。

最初の感想は、ただ一言。

「……ブラックボックスだらけで、中身が全然見えねえじゃねえか。誰が乗るかこんな欠陥船、即売却だ!!」

こうして、技術屋の「俺つえー(物理・魔改造)」の航海が幕を開けることとなる。

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