最近、平安時代を舞台にした物語を考えている。
でも、わからないことが多すぎて、まるで暗い森を手探りで歩いているみたい。
たとえば――平安の人たちって、夜はどんなベットで眠っていたの?
畳にお布団? それとも板の間に直に?
お風呂はあったのかな? 湯気の立つ檜の湯船に浸かって、雅に和歌なんて詠んでいたのだろうか。
それともただ冷たい川で身を清めていたのかな。
ご飯はどうだろう。
白米はぜいたく品だったと聞くけれど、じゃあ庶民は何を食べてお腹を満たしていたんだろう。
都の街中には、どんな音やにおいが漂っていたんだろう。
歌声や、車のきしむ音や、香の煙……。
そして――夜。
平安時代の夜って、どれほど暗かったのだろう。
月明かりか、せいぜいかがり火しかない世界。
考えるだけで背筋がぞくっとする。
きっと、怖くて眠れなくなってしまう。
当時の人たちは、闇をどう感じていたんだろう。
恐れ? それとも、神や妖の気配をすぐ隣に感じていたのかな。
(想像してるだけで、ちょっと涙目になりそう……)
貴族ではない人たち――田畑を耕す人や、市で物を売る人――彼らの暮らしぶりを想像すると、物語の厚みが増していく気がする。
調べることは大変だけれど、不思議と苦にならない。
一冊ずつ本を積み上げていくたびに、知識という名の塔が高くなっていくみたいで、どこまで登れるんだろうって胸が高鳴る。
でも、ふと思った。
いっそ平安ファンタジーにすればいいのかもしれない。
だって、もう魔物を出しちゃった時点で、真面目な平安絵巻じゃなくなってるんだから。
むしろ、闇を怖がる人間には、妖怪がいてくれたほうが納得できる気がする。
史実のすき間から忍び込む妖しの気配――それだって「平安の真実」なのかもしれない、とか。
――怖がりな私と、積み上がっていく知識と、そして空想。
その全部が混ざり合って、わたしの物語は少しずつ色づいていく。
