皆さまこんにちは!ペンネです。
クリスマスまで残るところ2週間ほどですね!
わたしはクリスマス用に今週末にも赤ワインを買っておこうかと思いますが、皆さまはいかがお過ごしですか?
先日、『Take Medicine~ダウナー系薬学生は意外とキャンパスライフを満喫している~』の第6話を投稿しました!
この季節には特にお世話になることが多い「総合感冒薬(風邪薬)」に関するお話ですので、また目を通していただけるとうれしいです!
さて、今回はその第6話とも関連する「酵素型受容体」について解説していきますね!
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まず、「酵素」とはなんでしょうか?
結論から言えば、「生体内で生じる化学反応を促進する物質」ということができます!
わたしたちの体の中では、絶えず化学反応が起こり、それが連鎖的に続いています。例えば、「解糖系」と呼ばれる代謝経路もそのうちの一つです。
ここで大切なのは、「酵素はあくまで化学反応を促進するだけであって、自らは変化しない」ということです。
つまり、酵素の性質としては、「ほかの物質にはたらきかけて化学反応を促し、自らには何らの化学反応も生じない物質」ということになります!
このような性質を「触媒作用」といい、そのような性質を有する化学種(物質およびその物質から生成されるイオンやラジカルの総称)を「触媒」といいます。
ちなみに、酵素は特定の物質にのみ作用し、特定の化学反応のみを促進するという特徴もあります。
まさに「鍵と鍵穴の関係」が酵素でも成り立つわけです!
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さて、薬の成分が体の中で作用するのは、細胞膜の表面に存在する「受容体」というタンパク質と結合するから、という説明はこちらのコラムでもしたかと思います。
「え?じゃあ”酵素型受容体”ってタンパク質なの?」
と思ったそこのアナタ!とても鋭いです!
酵素の本体はタンパク質であり、アミノ酸がさまざまな順番で直列につながることによって、多種多様な構造や機能を持っています。
そして、細胞膜の表面に存在する受容体は、特定の物質が結合することにより、その物質の情報を細胞内にシグナル伝達し、細胞の機能を活性化または不活性化することによって薬の作用が生じるというメカニズムでした。
これに対して、酵素型受容体は、特定の物質が結合することで、細胞内での酵素反応が生じる点に通常の受容体とのはたらきの違いがあります。
つまり、酵素型受容体では、基本的に「物質が結合してしまうと、細胞内で酵素反応が生じてしまい、何らかの化学反応が促進されてしまう」という特徴があると言えます。
そして、このような酵素反応の促進が病気の症状を引き起こすことが多く、「酵素型受容体に作用する薬は、基本的に酵素のはたらきを妨げる方向で作用する」ということができます!
具体的には、酵素に薬の成分が結合することで、その酵素が特定の物質の化学反応を促すはたらきを妨げることにより、細胞内の酵素反応も抑えるというわけです。
受容体にはたらきかける薬が細胞のはたらきを促進するものと抑制するものの2つのパターンがあることと比べると、その違いが分かると思います。
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いかがだったでしょうか?
酵素型受容体と薬の作用はやや複雑です。
ある薬の成分が複数の酵素にはたらきかけ、同時に酵素のはたらきを妨げる現象も見られます。
特に薬物代謝酵素であるシトクロムP450の特定の分子種のはたらきを妨げてしまう薬の成分もあり、複数の薬を服用している場合、飲み合わせによっては薬の代謝が遅れて副作用が出やすくなるものもあります。
また、特定の酵素の数を増やしてしまう「酵素の誘導」という現象が生じることもあり、これによって薬の成分の代謝が促進されることで薬が早い段階で排泄されてしまって十分な効果が見られないということもあります。
薬の作用を正しく理解する上では、薬の成分の化学的構造を理解することはもちろんですが、それが体の中でどのように分解・利用されるのかといった「生体内の化学反応」についても正しく理解することがとても重要です!
大学では有機化学や生化学といった領域で学びますが、その基礎にあるのは高校までで学ぶ化学と生物です。
『Take Medicine~ダウナー系薬学生は意外とキャンパスライフを満喫している~』でも、薬の作用にとどまらず、高校までの化学や生物の内容をトピックとして適宜取り上げて行こうかとも思います!
以上、ペンネでした!