皆さまこんにちは!ペンネです。
先日、『Take Medicine~ダウナー系薬学生は意外とキャンパスライフを満喫している~』の第8話を投稿しました!
抗菌薬(抗生物質)が作用するメカニズムを「有機化学」というメガネを通して観察したときの雰囲気についてざっくりと掴んでいただけましたら幸いです!
さて、今回は第8話のテーマとも関連する「細菌とウイルス」について解説しますね!
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細菌とウイルスはともに「微生物」と呼ばれます。しかし、厳密に分類する場合には、異なる系統(ドメイン)を構成します。
具体的には、細菌は「原核生物」、そしてウイルスは「真核生物」に分類されます。
原核生物とは、染色体(DNA)やリボソームなどの細胞質を含むものの、その染色体が核膜と呼ばれる膜に覆われていない細胞によって構成される生物です。
細胞質は細胞膜に覆われ、その外側は細胞壁という強固な組織が覆っています。
原核生物(=細菌)は、自らを分裂させる(細胞分裂)ことで増殖します。その際には、①DMAの複製、②RNAの転写、③タンパク質の合成、④細胞壁の合成、⑤各酵素による代謝反応、の5つを必須の要素として分裂・増殖します。
これに対して真核生物は、染色体(DNAあるいはRNA)が核膜という膜に覆われていて(=ここが原核生物との違いですね)、タンパク質とともに細胞膜に覆われている細胞から構成される生物です。
また、細胞膜の外側には侵入した生物の細胞に付着するためのスパイクと呼ばれる組織を持つものもありますが、細胞壁は持ちません(=この点も原核生物とは違いますね)。
真核生物(=ウイルス)は細胞分裂を起こしません。
「ちょっと待て!じゃあ、感染しても増殖できないのでは?」
と思ったそこのアナタ!そうです、鋭いですね!
そうなんです!ウイルスは細菌とは違って自らの細胞を分裂させて増殖することができません。
しかし、ウイルスはユニークな増殖の仕方をします。
そのカギを握っているのが染色体、またの名を「ウイルスゲノム」といいます!
ヒトなどの宿主の中に侵入したウイルスは、自分が持つ染色体(RNA=ウイルスゲノム)を宿主の細胞の内部に送り込みます。この現象を専門用語で「脱殻」といいます。
ウイルスゲノムには、そのウイルスの遺伝情報が含まれており、宿主の細胞の中の物質(主にタンパク質)を利用して遺伝情報を合成し、ウイルスを大量に作り出します。
そして、宿主の細胞内で作られた「ウイルスのコピー」が大量に細胞の外に放出されることによって、ウイルスは増殖していきます。
このように、細菌は「自らを細胞分裂によって物理的に増やしていく」一方、ウイルスは「自らの遺伝情報を宿主の細胞の中に送り込むことで自らのコピーを増やしていく」ということが言えます。
そして、増殖のメカニズムが違うからこそ、細菌には対細菌用の薬(=抗菌薬)、ウイルスには対ウイルス用の薬(=抗ウイルス薬)を使い分けないといけないということなのです!
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いかがだったでしょうか?
わたしたちヒトもまた、実は真核生物です。つまり、細菌とは異なる系統(ドメイン)の生物というわけですね。
そして、抗菌薬は「原核生物(=細菌)だけに毒性がある薬」であるとも言えます。
例えば、第8話のメインでもある「β-ラクタム系抗菌薬」は、細菌の細胞壁の合成を阻害する薬でした。
しかし、わたしたちを構成する細胞のどれを見ても細胞壁という組織は存在しません。
そのため、「β-ラクタム系抗菌薬」は実際には「細菌に対してのみ毒性の作用を及ぼす薬」ということができます。
このような性質を「選択毒性」といい、抗菌薬を語る上では欠くことのできない特徴です。
「抗菌薬」とは言っても、その作用機序にはさまざまなものがあります。それらについてすべてを取り上げる……かどうかは分かりませんが、「あまり専門的過ぎず、かと言って薄っぺらくなり過ぎず」の微妙なラインを攻めながら更新をしていきたいと思います!
マニアックな内容なので万人受けするとは思っていません!
でも、何かの拍子でご覧いただけたらとても嬉しいです!!
以上、ペンネでした!