予告「刻むリズム」
ふん♪ふん♪ふんふん♫
刻む、ビート♫
ドン♫ドドン♫ドドドン♫
ラララァ〜ラ♫ラララァ〜ラ♫
鼻歌は、思ったよりもよく響いた。
屋上は静かで、風だけがフェンスを鳴らしている。
遠くの街は、いつも通りの色をしていた。
帰宅途中の誰か。
光る信号。
今日を終えるだけの夜。
「さぁ、行こうか」
ドン♫ドン♫
声は、自分でも驚くほど穏やかだった。
問いかけじゃない。
確認でもない。
もう決まっていることを、口にしただけ。
足元の影が、縁でいびつに折れる。
風が一度、強く吹いた。
制服の裾が揺れて、鼻歌が途切れる。
次の瞬間――
世界は、音だけを残して置き去りになる。
落ちる、という感覚はない。
あるのは、始動。
何かが、確かに切り替わったという手応えだけ。
暗転。
そして、
朝のチャイムが鳴る。
ふん♪ふん♪ふん♪ふふん♪ふん♫
「駆け抜けろこのリズム」
ドン♫
──さぁ、復讐のリズムを刻もう。
