「忘れてしまったもの」を含む小説

ある事情からふと『思い出されることを待つ道』へと迷い込んでしまった青年、凬巻散理。広く伝わっていた話によれば、そこは誰かから忘れられたさまざまな『記憶』が、主に思い出してもらうた…

悠人（２９歳）の祖父、源一郎が29歳の時、愛した女性――27歳で夭折した恋人・汐（しお）が残した一冊の古びた手帳を発見したことから、悠人の内省の旅は、58年間の時を超えた因縁へと…

――探さなきゃ。 ――探さなきゃいけない。 ――大切なもの。だいすきだったのに、忘れてしまったもの。 目が覚めると、そこは色が失われた透明な世界だった。目に映るものすべてに色味…

創世の影 ― ヴィタス＆ネザーク・サーガ 光と腐敗の見えない戦争によって引き裂かれた世界で、ネザークと呼ばれる怪物が現れ始めた。彼らは人間の心を糧とし、負のエネルギーの深淵から生…

　この作品はじつのところ、いつ書いたのかすら忘れてしまったものです。題名にタリム（中国西域にあるタリム盆地）とあるので、おそらく早川書房のJA文庫で出版して頂いた『タリム７』のス…

これまで時代小説はあまり読んでこなかったのですが、文芸評論家の秋山駿さんのあとがきを見ておもわず手に取ってしまいました。現代の小説が人間の裏側ばかりを書いて、純粋で清純なものを軽…

冬の朝の図書室には二人だけだった。 私の地元にはいわゆる大手の予備校が1校もなく、受験勉強といえば教室か図書室で、寒かったことを覚えている。 今日もどこかでがんばっているすべての…

被根鳥泰三（ひねとり・たいぞう）にはどうしても捨てられないものがある。 それは子供の頃に買ってもらったテディベア。 が、さすがにここ数年は部屋の片隅に置きっぱなしにしていたのだが…

大阪北摂に住むわたしたち家族が、和歌山県の海水浴場に出かけるのはまる一年ぶりだった。 出発前、子どもが全員車に乗っているかを母は必ず確認する。 「もうお母さん、誰かおらへんかっ…

考古学。 「ロマンじゃ、飯は食えない」とわかっているけど、やめられない。 若者たちは今日も地面を覗き込む。

皆さんは忘れ物をした事がありますか？ 心の忘れ物を。 あの時ああしておけば、こうしておけば。 言いたかった言葉。 するべきだった行動。 あの時、あの場所で。 時間の狭間に忘れてし…