カクヨムコンの応募受付期間も終わり、結果が出てくるのはもう少し先ですが、参加した皆さままずはひとまずお疲れ様です。
 しかし、コンテストがあろうがなかろうが日々新しい作品が投稿されるのがこのカクヨムという場。というわけで、今回も新作特集、金のたまごをお送りいたします!
 今回紹介するのはとびっきりぶっ飛んだ文体で描かれる女子校生たちの奇妙な日常SFに、因習村ホラーに見せかけたもっと別種類の何か、絶望的な環境下で日々命を繋ぐ人々を描いたダークファンタジー、異世界転生のパートナーにチート能力を持った種付けおじさんを選ぶTSものといずれも尖った内容の作品を選びました。
 読む専の方もカクヨムコンが終わって少し落ち着いたという方も是非是非お気軽にどうぞ。

ピックアップ

奇妙な名前の部活の奇妙すぎる活動実績

  • ★★★ Excellent!!!

「嘘を読まされているな」というのが本作への第一印象である。

 試しに本作の冒頭の「謝辞」を読んでくるといい。私の発言が真実であることがはっきりとわかるはずだ。そしてこの「謝辞」を読んだ人ならば察せられる通り、本作はこうしたトンチキな大ボラが作品全体にあまねく散りばめられている。この独特のリズムで繰り出される珍文の連続が本作の最大の魅力であることは間違いない。

 だからといってストーリーがつまらないということはない。各話ごとに春原女子校のドクターペッパー道部の面々が、突如襲来した宇宙人と地球人類の命運を賭けてボードゲームで対決したり、突如宇宙人が爆弾を投下した山へハイキングに行ったり、校内で例年通りに開催される変則トライアスロン大会に参加したりと、文体に負けない不条理すぎるイベントの目白押しである。あまりに珍奇すぎる内容なので全てをただただ思いつきで書いてるのではないかと疑ったりもするのだが、読み直すとしっかり伏線のようなものも張られているのが恐ろしい。個人的には第2話でサラッと登場する「降雲」という概念とその取り扱いにはSFならではの面白さが存分に詰まっているように感じられた。

 読んだことで人間的に成長するわけでもないし、感動のあまり滂沱の涙を流すという作品ではない。ただ小説に対して「面白い嘘」を求めている読者にとっては、一読する価値のある作品であることは約束しよう。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

女性しか生まれない村で行われる儀式に隠された真実とは……?

  • ★★★ Excellent!!!

 女性しか暮らしていない閉鎖された山村。そこでは毎年秋になると“オン”と呼ばれる存在が外から連れてこられ「男飼」と呼ばれる奇妙な儀式が行われていた……という説明だといかにも因習村を題材にしたホラーのように感じられるだろう。実際「男飼」の一部が描かれる第一話は読んでいて少しエロティックでありながら、思わず「ヒィッ……」といううめき声を上げそうになる怖さを孕んでおり、それ以外でもホラーらしい描写はたっぷりとある。

 しかし、こうしたホラー描写は本作の一側面にすぎない。物語は冒頭から、「なぜ『男飼』のような儀式が行われるのか」「外界から隔絶されたこの村はいかにして成り立っているのか」という複数の謎を内包している。そして村に秘められた真実を薄皮を剥ぐように徐々に明らかにしながら、それらを解き明かすミステリー的な魅力も備えている。

 この村に隠された情報の扱い方が実に巧みで、村で生まれ育った主人公にとっては当たり前とされる描写が、読者の眼には違和感として少しずつ引っかかり、そうして積み重なった違和感が最終的に氷解する構図が美しい。

 フェティシズムが感じられる描写が随所にちりばめられながらも、娯楽性の高い物語としても最後まで描ききっており、作者の技量が感じられるミステリホラーだ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

地獄のような断崖で彼らは生き続ける、いつか竜に殺されるその日まで。

  • ★★★ Excellent!!!

 ファンタジー作品を世界観の独自性で測るのであれば、本作は文句なしの高得点ですよ。

 本作の舞台となるのは、竜から人類を防衛するために断崖に建てられた巨大な構造物《クウォーター》。そこでは「竜刑者」と呼ばれる囚人たちが暮らしており、彼らは竜の襲来に備え、日々クォーターの修繕と増築を延々と続けていく……いつか竜に殺されるその日まで。

 この舞台設定が実に素晴らしく、竜が襲来することを前提にした施設のため、実際に竜が来たら何人も殺されるのだけど、竜が来なければ今度は食料不足によって餓死者が出るという超絶ブラック施設。平時の仕事の内容も一日中ずっと超高層ビルの工事をしているようなもので、少しでも足場を踏み外せば即落下死という日常が展開されるわけですが、そこで暮らしている人々の生活描写の解像度が大変高い。終わりのない過酷な労働の上に、いつ竜が来てもおかしくないという悪夢のような日常の中で、心をすり減らす人々の様子がしっかりと描かれます。

 この日常の描写だけでも陰鬱な気持ちになってしまうのですが、その陰鬱さを悪い意味で吹き飛ばすのが竜の襲来。この世の終わりのような環境かと思っていたら、より具体的な形で終わりがやって来るという絶望感が凄まじい。

 あまりにハードすぎる設定で楽しそうな描写がほとんどなく、やや人を選ぶかもしれませんが、ダークファンタジー好きの人なら決して見逃すことのできない一作です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

効率的なプレイって、つまりこういうやり方だと思うんですよ

  • ★★★ Excellent!!!

 病で亡くなったものの女神によって異世界へ転生することになった主人公。よくあるパターンだね。転生時に強制的に女性にされることになり、女神はさらに特典としてチート級のパートナーを選ばせてくれるという。うんうん、まあまあ見かけるパターンだね。そこで主人公がパートナーに選んだのは圧倒的に最強なステータスを持つ巨デブ種付けおじさんだった……これはあまり見たことがないパターンだな……。

 転生した世界は鬼畜系のエロゲーが元ネタとなっていて、お約束のステータスを確認しても出てくるのはエロ項目ばかり。味方にバフ効果を与えるためにはエロいことをしなければならず、当然主人公も種付けおじさんとHしなければならないという地獄のような環境……なのだが本作の主人公はあっさりと割り切って軽い感じで種付けおじさんとエロいことを致してしまう。前世で結婚もして子供もいただけに割り切りが強い……!

 この割り切り感が強いために、バフと称して様々なエロいことをバンバンやってるのだがそこまでエロい空気にはならず、むしろバカバカしさの方が強く感じられるという独自の味を醸し出している。

 それでいて、本人は割り切っているつもりでいながらも、見た目はともかく人間性はだいぶマトモな種付けおじさんにどんどんと情が湧いてしまって、ギャグっぽい空気の中でもしっかりTSものの醍醐味を抑えているのが大変良い。

 また途中から敵の意外な正体が判明したりして、一見酷すぎる設定ながらも決して出オチで終わらせず様々な展開で読者を楽しませようとする、異色すぎるTS転生ファンタジーだ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)