おじさんになってそこそこ経ちますが、思えば年齢的にお兄さんだった頃からずっと老けていると言われてきました。そしてその後「老け顔のヤツは歳取ると若く見えるよー」と慰められても。
でもですね、若く見えるはずの歳に達して、実際歳より若く見られるようになって、気づくのですよ。“ほんとは若いおじさん”から“年齢不詳のおじさん”にシフトしただけだという衝撃に事実に!
そうです。結局わたくし、おじさんのカテゴリーから抜け出せてなかったのです!
目下の悩みは、いかにやんわりとおじいさんカテゴリーへ軟着陸するかだったりしますがもちろん、正解は見えていません……というわけで、新作レビュー行ってみましょう。

ピックアップ

とある喫煙所、煙草で繋がれる人の縁

  • ★★★ Excellent!!!

町に点在する“喫煙所”。そこで演じられるささやかな人間模様を描いた短編集。

と、これだけの説明で収まってしまうこちらの作品、まず感じていただきたいのは「喫煙所」そのものです。喫煙者だからこそ喫煙所に集まることは必然なのですが、そうであるからこそ余計な説明を加える必要がなく、読者をストーリーへ引き込めます。舞台そのものを物語の“起”として機能させる構成は、短編作においてひとつの最適解ですよねぇ。さらに言えば、喫煙者という共通点をもってごく自然にキャラクター同士の距離感を縮めていく著者さんの技法もすばらしい。

そうそう、登場するキャラクターさん方にもまた味があるんですよ。別に尖っているわけじゃないけど、どこか斜に構えている感じで。彼らのまっすぐならぬ言動はユーモラスで少し寂しくもあって。煙草がもたらす間(ま)と相まって、小説の重大要素である「作品のにおい(雰囲気)」としてよく効いているのです。

さくっといい話が読みたい方、人間ドラマをお求めの方、そしてもちろん、喫煙家の方にもおすすめいたしますー。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

引き際とは迷うものならず、間違ってはならぬもの

  • ★★★ Excellent!!!

刀工として生き、後継者に恵まれぬまま老いた青野仁。彼は跡継ぎとなることを拒んだ息子から指摘されるまでもなく、自らの衰えを自覚していた。かくて闇雲に焦る中、先祖であり、同じ刀工である初代青野仁の日記を手に取る。引き際に迷ったとき開けと先代から渡された代物を――

仁さんがいる状況はのっぴきならないものです。彼が刀工を辞めるということは、初代から継がれてきた技を棄てることに他ならないからです。キャラクターへの個性のつけかたは種々ありますが、このような「状況」という必然性を、外連味なく練り込んでみせる筆はお見事と言うよりありませんね。唸らせられました。

そして初代というキャラクターですよ。とある依頼主のために打った刀を軸に、初代と依頼主が交わす厚い心情! 情通えばこそ紡がれる切ないセリフの数々! その末に後継へ思いを託した初代の念……ひしと伝わってくるのです。

けして派手ではないけれど限りなく滋味深い、道の果てに立った男の物語。ぜひご一読いただけましたら。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)