夏といえば何をイメージしますか。照りつける日差し、青く高い空と雲、蝉の鳴き声、じめじめと肌に貼り付くシャツ……日本の夏は過ごしやすいとは言えないけれど、それでもなにかが始まりそうな、思わずワクワクしてしまうような情熱を感じる季節です。はじめての物語を読むときも、世界観が高く遠くに広がってキャラの声が聞こえきて、その場に自分がいるかのような臨場感に浸ります。そんな高揚感が忘れられないから本を読むのがやめられない。今回紹介する作品で、そんなワクワクをみなさんに少しでも味わっていただけたら嬉しいです。
大泉学園町で地域密着型の工務店を営むイケメン専務・舞波いすみが、恩師の紹介で請け負った案件は、日本政府が密かに管理する「扉」の先にある異世界の土地での建設工事だった。
舞波工務店は、かつて有名設計事務所のエースとして働いていた舞波いすみを始め、皆ベテラン揃い。
建築法や規制もない広い土地なら、のびのびと仕事ができる!と思いきや、異世界では魔法を使って建物を強化したり、雨風を弾いたりできるため、まともな技術や設計を身に着けた職人がいなかった!
いかにもファンタジックだが、確かにそんないい加減に造られた建物に住むのは敬遠したい。
さらに頭の固いお役人が現地人とトラブルを起こしてと、問題だらけの現場をいすみがどうまとめるのかに期待が高まる。
この作品の一番の持ち味は、なんといっても建築のリアリティだ。作家の本職も建築士というから、なるほど描写の詳細さもうなずける。
工務店のお仕事も学べる、働く大工さんが活躍する異世界ファンタジーだ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
京都の高校へ進学と同時に一人暮らしを始めた女子高生・つむぎは、出会ったばかりのクラスメイトの女の子マツウラさんに一目惚れして、ひょんなことから同棲生活を始めることに。
しっかり者のつむぎと天真爛漫なマツウラさんの日常を描くほんのり甘い百合ラブコメ。
女の子に恋をしてしまった自分に戸惑い、一緒に暮らす間にもさらに彼女に惹かれていき、自分の気持ちを告白できずにひとりで片思いを募らせるつむぎの姿が初々しくて可愛らしい。
もう一方のマツウラさんは、超大金持ちの箱入り娘のはずだが、狭いアパート暮らしにもあっさりと馴染み、ジャンクフードや庶民グルメが大好物に変わり、このお嬢様、順応性高いな!
親からの仕送りで生活する二人のたまの贅沢といえば、デパートのフードコートの一杯320円のラーメンや、コンビニのレジ横のホットスナックという慎ましさ。
そんな質素な暮らし中で、ちいさな幸せを分け合う美少女ふたり、なにこれ尊すぎか!
日本でも同性パートナーシップ制度が認められるようになった時代。いまや女同士のこんな同棲生活も当たり前かも知れない。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)