隔絶された土地「彼岸埜(ひがんの)」で祖父母と暮らしてきた少女イヲの物語は、序盤から暮らし模様が丁寧に描かれていきます。
古い因習や貧しさに縛られる暮らしが緻密に浮き上がり、その描写は本当に物語の世界にいるかのような心地になりました。
そんな中、砂利浜で倒れていた謎の男「サザト」と触れ合うことで、物語は大きく動き始めます。
本作の魅力は、風景がとても丁寧に描かれていること。
読みながら、砂嵐や港の匂いが届いてくる。
育ちの影響もあり肯定感の低いイヲが、少しずつ変わっていく姿は胸を打つものがあります。
なにより素朴で誠実な姿が魅力的で、つい応援したい気持ちになる。
高貴な雰囲気のサザトとの対比によるイヲの心理描写も繊細で、さらにこの出逢いが新たな展開を予感させる。
まだ拝読している途中ではありますが、先行きがとても気になります。
静かさの中に謎があり、伝承やロマンスの香りもする深みのある物語を、ぜひ手にとってみてください。