魔法体系を魔導格子、魔導核という概念で統一し、スライムから神代兵器まで同じ論理で解き明かす一貫性は知的快感につながっている。
追放、インフラ解除、世界へという序章のカタルシスも良くて、痛快さと知的興奮が同居している。
また、リゼルカの、世界への好奇心が復讐心を上回っているというキャラクター像は、ありがちな追放ものへの批評になっている。
研究メモとカイの記録という構造も、同じ出来事を全く異なる深度で見せることで笑いと深みを両立させている。
追加で、魔王災害の原因究明という大きな目的が、日常的な解剖エピソードの積み重ねと有機的につながっている構成力についても拍手したい。
追放。我々が活動しているカクヨムではよく見かけるジャンルの一つである。理不尽な理由で追放され、その後力を得て復讐する。その爽快感がたまらないジャンルである。
ところが、本作で追放された千年エルフ科学者のお姉さん……リゼルカはかなりぶっ飛んでいる。基本的に、周りのモノ全てを研究材料として見ているのだ。スライムから子どものドラゴン、果ては魔王でさえも、彼女にとっては研究対象。彼女にとって、追放など大した問題ではない。むしろ、喜んでいるのではないだろうか。なにせ、『王宮』という外付けの倫理観から解放されたのだから。
チェーンソー片手に、お供の男の子と異世界を旅する彼女。果たして、翼の生えた虎は、何処へ向かうんだ……?