ショートショート

玄 律暁(げんりつあき)

名前を聞かれる


 中学3年生の時。

 剣道部の練習試合に親関中学校に行った。

 私は大将として出場して、自分より一回り大きい相手に2本勝ちを収めた。その後、数人の陸上部らしき男たちから声をかけられた。


「名前、なんていうんですか?」

「……玄律暁げんりつあきです」


 ――2年後。2度目の高校1年生をやっていた頃。


 知らない女の子に突然話しかけられた。


「玄さん! 少しいいですか?」

「えっ? どうしたの?」

「親関中学校に剣道部で練習試合に来ていましたよね」

「ああ、何度か行ったね」

「名前、聞かれた時ありませんでしたか?」

「あったあった。陸上部っぽい人に聞かれた」

「それわたしです!」

「えっ? ……君、女の子だよね」

「もちろん……『名前を聞いてきて』って頼んだのがわたしなんです」

「ああ、なるほど! そうだったんだ。光栄だなぁ……しかしなんでまた?」

「……気になったので」

「……そうなんだ」


 微妙な間があった。おそらく気があるんだなと嬉しくはなったけれども、付き合っている彼女がいる手前、何とも言えなかった。


 私は酷いことをした。


 その女の子に別の男を紹介したのだ。


 あの時は申し訳なかったと謝りたい。


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