避けられる理由

「なあ」

「……ん……」


 『クラスで避けられている生徒』と二人だけになった。私に話かけられるとは思ってもいなかったらしい。


「……何の本読んでる?」

「えっと村上春樹の……」


 受け答えに違和感があった。早く返答しすぎている。


「そうか。同じ『村上』でも『龍』のほうがずっと面白いと思うけど」

「はぁ……」

「どっちでもいいけど、お前、クラスのみんなから避けられているの知っているよな?」

「……それはまあ、なんとなく」

「理由を教える」

「あ……は、はぁ?」

「……そのままでいいと思っているんだったら、何も言わないけど」

「じゃ、じゃあ、教えてください!」

「うん、簡単なことなんだけどさ」


 端的に言った。


「お前、毎日風呂入ってねえだろ?」

「……いえ、そんなことは……」

「じゃあなんでそんなに『フケ』が出ているんだ?」


 それに、数日間風呂に入っていないかのような油っぽさがあった。


「まずそこ治せば、避けられることもほぼなくなると思う。そうしたほうがいい」

「なるほど……」


 残念だが数日経っても改善されることは全くなかった。彼がそういう体質だったのかもしれない。

 他の生徒や教師にはできない、一歳年上である私の役回りだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る