棄冕者
瓶の中の小さな忌まわしいもの
第1話楽園という名の腐刑
エルフの郷の校内暴力には、血の気がまったくない。それは優雅で、正確で、窒息するような芸術性を帯びている。殺し合いのような粗野さはないが、いかなる肉体的苦痛よりも骨身に沁みる。一回ごとの加害は、エルフ族特有の傲慢さに包まれ、最も脆弱な箇所を正確に突き刺す。痕跡は残さない。ただ底なしの屈辱の中で、尊厳を少しずつ、摩り下ろしていくのだ。
私は垂星(すいせい)の谷の古木に吊るされていた。足下には底の知れない渓谷。林間の花香を巻いた風が吹き抜けるが、私にこびりついた狼狽と痛みを拭い去ることはできない。それは【蔦の術】で編まれた枷だった。乱暴な縛り方ではない。瑞々しい緑の枝条が意思を持つ蛇のごとく、私の手首に沿って緩やかに這い回り、その先端に宿る魔法の冷気が、音もなく手首の肉へと食い込んでいく。寸分ずつ、血の巡りが遮断される。指先の感覚は疾うに失せ、干固した血痕のような粘着質な暗紫色を呈していた。わずかに身じろぎするたび、手首に引き裂かれるような鈍痛が走り、血管を伝って全身を侵食していく。
「これが、人間の限界か?」
清冷な声が林の中から響いた。そこには無造作な嘲弄が混じっている。光と影が交錯する樹影の中に、金髪のエルフの留学生が立っていた。銀灰色の双眸は、半分も温度を持たぬ氷のごとく。彼は背筋を伸ばし、その衣の裾は塵一つなく清浄だった。細長い指先には純粋な雷球が跳ねている。雷光は透き通り、細砕された星辰のようでありながら、致命的な威力を孕んでいた。詠唱も、魔法道具も必要ない。ただ軽く一振りするだけで、その雷光は細い光の鞭と化し、鋭い破空音と共に私の肋骨を正確に打った。
皮肉が裂けることも、鮮血が飛び散ることもない。紅潮すら見当たらない――これがエルフ式暴力の優雅さだ。肉体の外殻を破壊せず、筋理を貫いて魂を直撃する。その震動が骨の隙間から伝播し、全身の筋肉が瞬時に痙攣した。四肢が制御を失って引きつけを起こし、喉の奥から引き裂かれた、乾いた哀鳴が漏れる。首を絞められた幼獣のように、微弱で絶望的な声。顔を上げて彼を睨みつけようとするが、首もまた蔦に束縛され、ただ徒(いたずら)に眼球を動かすことしかできない。光の中に立つ彼は淡々とした表情で、まるで取るに足りない玩具を弄んでいるかのようだった。
このような屈辱は、疾うに私の日常だった。エルフ学院で月に一度行われる実力測定。私に下される評価は、常にあの冷淡な数文字だ。星光の墨で評定の巻物に記される、刺々しく皮肉な言葉――「魔力平庸」。いかなる説明も、余地もない。凡庸な私の存在そのものが、エルフが生まれ持つ天賦への冒涜であり、この象牙の塔の優雅と清浄に対する汚物であるかのようだった。
私はこの塔における異物であり、不適合な侵入者だった。高慢なエルフのみならず、同じく「劣等生」に分類される地精(ゴブリン)たちでさえ、私の尊厳を泥靴で踏みつけることで、微々たる優越感に浸っていた。授業が終わるたび、誰もいなくなった教室で、地精がのろのろと私の机に歩み寄る。そして机に粘着質な唾を吐きかける。動作は粗野だが、その瞳には死地を脱したかのような安堵が満ちていた。私を貶めることで、自分たちが最底辺ではないと証明しているのだ。
「おい、猿」地精はどこから手に入れたかも分からぬ粗悪な魔棒を、無骨な四本の指で拭きながら、隠そうともしない嘲笑を浮かべた。「俺様はまだ元素の屁の臭いくらいは嗅げるし、高階魔法を無理やり動かすこともできる。だがお前はどうだ? 俺たちの引き立て役にもなりゃしねえ」
私は反論しない。反論はさらなる虐げを招くだけだ。天賦の才が絶対的な法であるこの地において、弱さこそが原罪だった。魔導理論と錬金術の講義において、私が満点を取っていようとも。
人間の中で魔法を覚醒させる者など、指で数えるほどしかいない。自分は選ばれし幸運児だと思っていた。だが天才たちの群れに投げ込まれた時、私の魔法の才能はあまりに平坦だった。一年間の拷問を経て、自信も陽光も失われた。私は己の出生を憎んだ。いっそ魔法など感知できない体であったなら、どれほど救われただろうか。
同級生たちは、私と同じ席に座ることを拒み、いかなる交わりも拒絶した。食堂でどこに座ろうと、周囲の席は瞬時に空き、残酷なほどに整然とした荒野が出来上がる。私の呼吸が、彼らの優雅な存在を汚すとでも言うかのように。図書室では最も暗い隅に身を潜める。指先で冷たい魔法典籍をなぞる間、耳に届くのはエルフたちの優雅な囁き声。私の周りには常に死寂があり、ページを捲る音さえ、ひどく場違いで突発的に響いた。
私はその荒野の中心に座り、頭を垂れ、自分にこびりついた「野蛮」とされる汗臭さを嗅いでいた。それは魔法を死に物狂いで練習した痕跡であり、凡庸に抗い、足掻いた証明だったが、この優雅な土地では、嘲笑の新たな理由に成り果てていた。窓から吹き込む風が、林の花香とエルフたちが纏う淡い魔法の薫香を運んでくる。それが私の汗の臭いと混じり合い、鼻を突き、皮肉なほどに鋭く、魂に刻まれた尊厳を無声の平手打ちで打ち据えた。
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