第15話 キオに武器禁止令が出た日

 冒険者ギルドの掲示板に講習会の告知が貼ってあった。

『初心者向け剣術講習会 参加者募集中』


「ダイキチ、アレ」

「見てた」

「イク?」


 大吉は腕を組んだ。

 先日の依頼でピンチになった時、キオの怪力に助けられた。情けない話だが事実だ。木刀の性能に頼りすぎて基礎がない。このままではまずい。


「行く」

「キオモ イク」

「見学だぞ」

「ウン」

   *

 講習会の会場はギルドの裏手の訓練場だった。

 参加者は十人ほど。講師は白髪混じりの厳つい男だった。


「俺はベルグ。今日から基礎を叩き込む。まず素振り百回から始める」


 全員が剣を構えた。大吉だけ木刀を構えた。


「お前、その木刀は」

「愛用してます」

「まあいい。始め」


 素振りが始まった。

 キオは端っこで見学していた。最初は大人しく眺めていた。

 しばらくして訓練場の隅にサンドバッグを見つけた。


「…」


 近づいた。

 一発殴った。

 サンドバッグが吹き飛んだ。支柱ごと。


「「「え」」」


 全員の素振りが止まった。

 キオはサンドバッグの残骸を眺めた。


「カタカッタ」

「キオ」

「ウン」

「見学だと言った」

「ミテタラ フリタクナッタ」


 ベルグが大吉に近づいてきた。


「その子は?」

「見学のつもりでした」

「つもり?」

「はい」

「サンドバッグが」

「すみません」


 ベルグがしばらくキオを眺めた。


「その子に剣を持たせたら強いんじゃないか」

「やめてください」

「なぜ」

「経緯が長い」

「教えてみろ」


 大吉はため息をついた。

   *

 五分後、キオが木刀を持っていた。


「ダイキチノ カシテモラッタ」

「待て」


 遅かった。

 キオが木刀を構えた。

 振り下ろした。

 目の前の地面にクレーターができた。


「「「え」」」


 キオが首を傾けた。


「チガウ?」

「振り上げてみろ」


 ベルグが言った。大吉が止める間もなく。

 キオが木刀をおもいっきり振り上げた。

 後ろの地面にクレーターができた。


「「「なんで後ろ?」」」

「キオ」


 大吉が木刀を取り上げた。


「モウスコシ フリタカッタ」

「ダメだ」

「ナゼ」

「危険だから」

「キオ キケン?」

「お前じゃなくて周りが」


 ベルグが大吉の肩を叩いた。


「経緯が長いというのはこういうことか」

「そうです」

「その子、武器は禁止だな」

「そうしてください」

「キオ ダメナノ?」

「ダメだ」


 キオが拗ねた。頬を膨らませて地面を見ている。

 ベルグがくっと笑った。


「かわいいじゃないか」

「モウスコシ フリタカッタ」

「我慢しろ」

「ウン…」

   *

 それからは素直に見学に戻った。

 大吉が素振りをする。キオが眺めている。


「ダイキチ、ヘタ」

「わかってる」

「モット コウ」


 キオが身振りで示した。意外と的確だった。


「お前なんでわかるんだ」

「ミテタラ ワカル」


 ベルグが横から口を挟んだ。


「その子の言う通りだ。脇が甘い」

「キオト イッショ」

「師匠と同じ意見か」

「センセイ?」


 キオがベルグを見上げた。


「センセイ、キオノコトモ オシエテ?」

「武器は禁止だぞ」

「ウン、ソレイガイ」


 ベルグが苦笑した。


「まあいいだろう」

「ヤッタ」


 キオが大吉を振り返った。


「ダイキチ、センセイデキタ」

「よかったな」

「ダイキチモ ヨカッタネ」

「…まあな」


 大吉はまた素振りを始めた。

 隣でキオがベルグに何か話しかけていた。ベルグが笑っていた。

 街に来てよかったと、大吉は思った。


作者より:


ここまでお読みいただきありがとうございます。

本作は第16話より、毎週火曜日の18:30頃に更新するスケジュールへと移行いたします。

ストックは十分にありますので、引き続き彼らの末路を見守っていただければ幸いです

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