第14話 普通の幼女じゃなかった

 その日の朝、大吉が目を覚ますと木刀が枕元に置いてあった。

 昨日の依頼で刃こぼれしていたはずの木刀が、きれいに直っていた。というより新品同様になっていた。


「キオ」

「ウン」

「これ、お前が直したのか」

「ネテタラ ナオッテタ」

「寝ながら直したのか」

「シラナイ」


 大吉は木刀をしばらく眺めた。


「…まあいいか」

「ウン」


   *

 午前中、宿のおばさんの手伝いをキオがしていた。大吉が依頼の準備をしていると声が聞こえた。


「あら、この花枯れちゃって可哀想ね」

「オバサン、コレ?」

「そうなの、もう駄目かしらね」


 しばらく沈黙があった。


「あら?」


 大吉が振り返ると、おばさんが目を丸くして鉢植えを見ていた。さっきまで枯れていた花が、白い花を咲かせていた。


「キオちゃん、これどうしたの」

「サワッタラ サイタ」

「触っただけで?」

「ウン」


 おばさんがキオを見た。キオはきょとんとしていた。


「フツウジャナイ?」

「普通じゃないわよ」

「ソウ?」


 大吉は遠い目をした。

   *

 昼過ぎ、露店通りでキオが子供たちと走り回っていた。

 大吉はガルドと並んで眺めていた。


「すっかり馴染んだな」

「そうですね」


 その時、子供の一人が石畳につまずいて転んだ。泣き声が上がりそうになった瞬間。

 キオが片手でひょいっと子供を持ち上げた。


「ダイジョウブ?」

「う、うん」


 子供がきょとんとした。ガルドがきょとんとした。大吉もきょとんとした。


「キオ」

「ウン」

「今片手で持ち上げたな」

「ウン」

「何キロあると思ってる」

「シラナイ カルカッタ」


 ガルドが大吉を見た。


「あいつ怪力か」

「知りませんでした」

「フツウジャナイ?」

「普通じゃない」

「ソウ?」


 キオはまたきょとんとした。

   *

 夜、宿に帰って大吉はベッドに寝転んだ。

 キオが隣で木の実をかじっている。


「お前さ」

「ウン」

「花咲かせたり怪力だったり、自分で気づいてなかったのか」

「キオ、フツウダト オモッテタ」

「全然普通じゃない」

「ダイキチモ フツウジャナイ」

「俺は普通だ」

「ジャージ」

「…それは認める」


 キオがくすっと笑った。


「ダイキチ、キオノコト フツウジャナイッテ イウケド」

「ああ」

「キオハ キノセイダカラ」

「そうだったな」

「ダイキチハ キノセイジャナイノニ フツウジャナイ」

「それどういう意味だ」

「ホメテル」


 大吉はため息をついた。でも口元が緩んでいた。

 窓の外で夜風が木々を揺らしていた。

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