第10話 この街も悪くない

 街に来て二週間が経った。

 依頼をこなして、飯を食って、宿に帰る。単純な繰り返しだった。でも洞穴生活に比べれば天国だった。

 その日の依頼を終えて宿に戻ると、キオが窓際で外を眺めていた。


「何見てる」

「ヒト」


 窓の下を人々が行き交っている。商人、子供、冒険者、露店のおじさん。


「にぎやかだな」

「ウン」


 大吉はベッドに寝転んだ。天井を眺める。


「洞穴と大違いだ」

「ドウクツ コワカッタ」

「どこが」

「サイショ ダイキチ シニソウダッタ」


 大吉は少し笑った。


「そうだったな」

「キオ シンパイシタ」

「知らなかった」

「シテタ」


 窓から夕日が差し込んでいた。キオの木の体がオレンジ色に染まっている。

   *

 夕飯はガルドと三人で食った。

 ガルドは肉を山盛り頼んで豪快に食った。キオは木の実をちびちびかじった。大吉は肉を食った。


「お前ら洞穴暮らしてたって本当か」

「本当です」

「何日くらい」

「二週間くらい」

「よく生きてたな」

「キオのおかげです」

「キオガ タスケタ」

「人形が助けたのか」

「喋りません」

「喋ってるじゃねえか」


 ガルドがまた笑った。

   *

 宿に帰って、大吉は窓から夜の街を眺めた。

 灯りがぽつぽつと灯っている。人の声がまだ聞こえる。

 キオが隣に来て一緒に外を眺めた。


「ダイキチ」

「ん」

「コノマチ スキカ?」


 大吉は少し考えた。


「まあな」

「キオモ」

「そうか」


 しばらく二人で夜の街を眺めた。


「この街も悪くないな」

「ウン」


 キオは短く答えた。

 でも窓の外を見る目が、洞穴の頃より少し柔らかくなっていた気がした。

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