とあるホームレスの、栄光からの転落人生が語られる本作。
きっと、最初はとても大きくて、角のある人物だったのだろうと思います。
プライドの高さから武装するかのように、己を守るために肥大化していった若き頃。
うーん、自分と重なりますね。
自分を偉く見せたい、何者かになりたいという若さゆえの願望が見えるような気がします。
しかし、あくまで付け焼刃なのですよね。
本物の実力が求められる場所では、そのメッキがはがされ……結果、転がり落されることになる。
それでもまだ「かつての栄光」が忘れられず、すがるように身を虚飾で固めようとするも、勢いがついて転がる身ではそれすらままならず落ちていく……。
決して他人事じゃないんですよね、これ。
むしろ、虚飾まみれのキラキラSNS時代だからこそ、彼のような人物は多く、そして目立つように思います。
その結果、彼は転がり落ちる所まで転がってしまったわけです。
落ちるたびに尖った部分が削れ、大きかった虚飾の鎧も剥がされ、どんどん小さくなっていきながら。
それでも、完全に彼が丸くなった、というわけでもないのは、彼の本質的な性(さが)でしょうか。
彼の辿った道筋は決して幸福なものではありませんが、それでも彼が最後に呟いた一言には、彼の人生が凝縮されているような気がします。
実に読み応えのある短編でした。
嘘をついてきた。何度も何度も。そして、それは見抜かれてしまった。
自分の墓場まで心を決めている人の嘘とはどんなものだったのだろうか。本当に周りの人は嘘つきだから彼から離れていったのだろうか。
この話を読むとただ励ましているだけじゃない、ホームレスの彼の語られない人生が気になって仕方ない。「最後まで転がり続ける」決意をするほどの転落とはなんだ。
きっと、励まされた彼もそれが腑に落ちなかったのだろう。そして公園へ余計に居座ったんじゃないか。でもホームレスは、彼が「帰れない理由」に納得していないと感じたのだろう。そのすれ違いが、既に答えを出しているのかもしれない。
だって、「俺は最後まで転がり続ける」といったホームレスは嘘つきだったのだから。