第35話 その後

「その怪我大丈夫⁉︎」


 翌日、学校に登校した僕の元へクラスの人達、中には話したことのない人を含めて集まってきた。


 それもそのはず、今の僕の姿は右腕にギプスを付けて頭には包帯が巻かれているのだから。

 

 医者の話では幸運なことに神経までは傷ついてないから全治3ヶ月で済むとのこと。頭の包帯に関してはまぁ打撲とかで諸々傷がいったけどそのうち取れるだろう。


「ははは……全然大丈夫じゃないよ」


 少しでも力を入れるとズキズキと痛む右腕を左手で撫でながら僕は答える。


「転校生と喧嘩したってのは本当?」


「本当だよ~。『美乃梨を傷つけるな!』って言いながら龍宮院を吹っ飛ばしたときは私も感動したよ~!」


「「きゃあぁぁ~~!」」


 僕の横で朱鳥はポーズを取りながらノリノリと答え、それを聞いた女子達は黄色い歓声を上げる。


「そう言われると恥ずかしいな……」


「なんでだよ! 怖くて動けなかった俺達と比べてお前は本当にすげえよ!」


 恥ずかしくて下を向く僕に男子達は明るく褒めてくれる。

 勇気をだしてよかった。そう思っていると教室中に更に大きく歓声が響いた。


「誠治くん。おはようございます」


「美乃梨……やっと登校できるようになったね」


「はい! 全部誠治くんのお陰です! それと……昨日は家まで押しかけてしまって申し訳ないです」


 そう言って美乃梨は頭を下げる。

 

 昨日の事というのは決着がついた後の話だ。

 美乃梨が呼んだ親に連れられ、もろもろの治療を済ませた後に美乃梨の父親と合流して僕の家まで謝りに来たのだ。


 お母さんの心配した顔を思い出し、胸が痛くなる。

 まぁ、その分美乃梨を助けれたしいいか! 僕は明るく考える事にした。


「まぁ、僕だけだったら説明足らずになってたかもだし仕方ないよ」


 そう実際僕は頭が真っ白になって、その場ですぐに話す事ができなかったのだ。あの場で美乃梨が龍宮院との関係を詳しく言ってくれたお陰でなんとかなったけど。


「治療費は全額こちらで受け持つので何でも言ってくださいね!」


「それ美乃梨のお父さんも言っていたけど、本当に気にしなくていいからね?」


「いえ、これは譲りませんから!」


 美乃梨は腕を組んで頑固な態度を崩さない。


「まぁ、それぐらいさせてやれよ」


「あれ、光輝?」


 なんと僕の元に久しぶりに光輝が顔を出したのだ。

 考えてみれば紬と格闘技の修行をしているときは学校でずっと寝ていたし、ご飯も紬と食べていたからな……。


「久しぶりって言いたい所だけどそれよりも先に……龍宮院と戦うときなんでいなかったんだよ!」


「あーそれはあいつに俺の顔を見られるわけにいけなかったからな」


「……なんで?」


「言ってなかったけど、俺の父親は龍宮院の親が所属している会社の本社の社長な」


「…………はぁ⁉︎」


「だから一応面識あるんだよな」


 え、いきなりの新事実に開いた口が塞がらないんだけど。

 

「ん? ということは……?」


 僕は美乃梨へ視線を移す。


「誠治くんが考えている通り、私とも一応知り合いですよ。加賀宮くんは覚えていないみたいですけど」


「なにぶん人と合う事が多いからな。悪い」


 光輝は両手を合わせて美乃梨へ軽く謝罪をする。

 

「美乃梨達と繋がりがあるっていうのはびっくりだけど、そもそも加賀宮くんは元から御曹司で有名だったしね」


「え?」


 横から朱鳥が平然とした顔で参入してくる。

 

「え、そんな有名なの?」


「むしろ知らなかったんですか?」


 美乃梨が不思議そうに首を傾ける。


 だって……あんま常識とかないし……。なんにせよ納得がいった。光輝が学校でも有名な理由ってイケメンなだけじゃなくて御曹司だったからなのか。

 

 …….…….あー。考えてみれば、御曹司っぽいところ多かったな……。

 ジムに行ったら貸し切りになってたり、みんなで買い物したとき店の店員に挨拶してたり。


「……さん付けいたしましょうか?」


「絶対に辞めろ」


 光輝はそう冷たく言い放った。


「ところでその怪我で文化祭どうすんだ?」


「文化祭?」


「あーそういえば後数週間で文化祭だね」


 文化祭……。その言葉を聞くとついつい下を向いてしまう。1年のときは一人で虚無ってたなー。

 なんて呆然としている僕に美乃梨は笑いかける。


「みんなで何かするなんて楽しみですね!」


「……だな!」


 1年の頃と違って今の僕には友達がいる。今年の文化祭は楽しくなるのかも!


**********************


 そして時間は少し流れ、文化祭の出し物決めが始まった。


 委員長主導の下、各々手を上げてやりたい事を挙げていく。候補に挙がったのはメイド喫茶と執事喫茶。


 ……なんだか似ているな。そう思った人は僕だけではなく光輝が声が上げる。


「……それ統合すればよくね?」


 よって僕たちのクラスの出し物は執事・メイド喫茶に決まったのだった。

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