第17話「新しい王、新しい関係」
国王が拘束された後、城内は大混乱に陥った。
だが、そこに現れた一人の人物が、事態を収拾へと導いた。
王の弟であり、賢者として知られるロイス公爵だ。
彼は以前から兄王の乱心に気づいており、幽閉されていたところを、混乱に乗じて騎士団長に救出されたのだ。
「レオ、そして魔王ベリアル殿。感謝する。あなた方のおかげで、この国は最悪の結末を免れた」
ロイス公爵は、魔族であるベリアルに対しても深々と頭を下げた。
「兄の罪は重い。私が責任を持って、新しい国造りを行うと約束しよう。そして……魔界との和平も」
「期待しているぞ、新王よ」
ベリアルは尊大な態度を崩さなかったが、その表情は柔らかかった。
「我らが必要とするのは、浄化技術と食料だ。代わりに、魔界特有の鉱物資源を提供しよう。対等な取引だ」
「願ってもないことです」
ロイス公爵との間で、即座に不可侵条約と通商協定が結ばれた。
人間と魔族。長きにわたって憎しみ合ってきた二つの種族が、初めて手を取り合った歴史的瞬間だった。
***
その夜、城ではささやかな祝宴が開かれた。
レオはテラスに出で、夜風に当たっていた。
広間からは音楽と笑い声が聞こえてくる。人間と、ベリアルの護衛として連れてきた魔族たちが、ぎこちなくも酒を酌み交わしているようだ。
「寂しいか?」
背後からベリアルが近づいてきた。
「……少しな」
レオは苦笑した。
「俺の役目は終わったんだなって思ってさ。勇者としての俺は、もう必要ない」
平和になれば、戦士は不要になる。それは喜ぶべきことだが、同時に自分の存在意義を失うことでもある。
「馬鹿を言え」
ベリアルがレオの腰を抱き寄せ、耳元に囁いた。
「世界には必要なくとも、余にはお前が必要だ。お前は一生、余の勇者であり、愛妻だ」
「愛妻って……男だぞ」
「性別など些細な問題だ。お前は余の子を孕めるだろう?」
ベリアルの手が、レオの平らな腹を優しく撫でる。
レオは顔を真っ赤にして、慌てて周囲を確認した。
「ばっ。声がデカい。まだできてないし」
「時間の問題だ。毎晩あれだけ注いでいるのだからな」
ベリアルは楽しげに笑い、レオを強く抱きしめた。
「レオ、共に魔界へ帰ろう。お前の新しい戦場は、余の隣だ。魔王の伴侶として、二つの世界の架け橋となれ」
それは、プロポーズだった。
これからの人生を、全て捧げてくれという、魔王らしい傲慢で情熱的な求婚。
レオはベリアルの胸に寄りかかり、星空を見上げた。
勇者を辞めて、魔王の妻になる。
かつての自分なら卒倒していただろう未来。
でも今は、それが何よりも幸せな未来に思えた。
「ああ。行ってやるよ、どこまでも。……覚悟しろよ、俺は手のかかる嫁だぞ?」
「望むところだ。余の全てで愛し尽くしてやる」
二人は月明かりの下、長く甘い口づけを交わした。
そのシルエットは、かつて敵同士だったとは思えないほど、完璧に重なり合っていた。
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