リメイク【現代版の笠地蔵】

崔 梨遙(再)

また書きたくなりまして 1458文字です。

 僕は、只野豚平(ただの とんペー)。40代、普通のサラリーマン。僕には悩みがあります。自分の体型にコンプレックスがあるのです。30代までは痩せマッチョだったのに、40を過ぎてからは、ドンドン中年太り。今はぽっちゃりという言葉ではおさまらず、ただのデブです。


 会社に30代半ばのお色気美人中途採用の麗華が入社してきてから、僕の心の中は穏やかではありません。口説きたい! 付き合いたい! でも、ダメなんです。太ってから僕は自信を無くしているんです。コンプレックスが邪魔して誘えません。


 そんなある日、最寄り駅から自宅のあるマンションまで歩いていると、お地蔵さんが雨に打たれていました。その日は大雨だったのです。僕はお地蔵さんに傘をさしてあげて、濡れて帰りました。なんとなく、良いことをした気分でした。


『昔話やったら、お地蔵さんがお礼をしてくれるんやけどなぁ』


 翌朝、マンションのドアを開けると米俵が置いてありました。手紙に、


『昨日は、ありがとう。by 地蔵』


と、書いてありました。いやいや、確かに米はありがたいですが、それならもっと叶えてもらいたい願いごとがあります。僕はお地蔵さんのところへ行きました。


『ちゃうねん、ちゃうねん、僕が欲しいのは筋肉なんです! 肉です! 肉! 肉!』


 翌朝、マンションのドアを開けるとスーパーの袋が置いてありました。袋の中は大量の肉、全て50パーセント引きのシール、賞味期限は今日まで。


 僕はまた、お地蔵さんのところに行きました。


『ちゃうねん、ちゃうねん、違うんですよ。僕の身体に筋肉を付けてほしいんです』


 翌朝、僕の腕には逞しい筋肉がついていました。そして胸の筋肉。そして大きな腹。


『腹が出たままやないかーい!? 腹もちょっと硬くなってるけどー! 惜しい!』


 僕はまた、お地蔵さんのところに行きました。


『ちゃうんです! ちゃうんです! 腹は引っ込めてほしいんです! 腹筋もほしいんです! 昔みたいな痩せマッチョにしてください!』


 翌朝、僕の体は30代の全盛期の頃の痩せマッチョになっていました。これです! これなんです! 僕が求めていたものは! 僕は自信を取り戻しました。これで麗華を誘える!


 その日は、僕と麗華が遅くまで会社に残っていました。僕は自信満々で麗華に話しかけました。


『麗華さん、見てください!』


僕は上半身裸になりました。


『この体で、これから麗華さんを幸せにします』


マッチョポーズ。


『僕は麗華さんを愛しています!』


マッチョポーズ。


『麗華さん、僕と結婚を前提に付き合ってください!』


マッチョポーズ。


『あの……私、ぽっちゃりしてる人が好みのタイプなんです。痩せる前の只野さんでしたらOKしたのですが、今の只野さんではOKできません』

『なんじゃそりゃあああああ!』


 僕はまた、お地蔵さんのところに行きました。


『すんません、元の体に戻してください!』


 翌朝、ドアの前に手紙が落ちていました。


『いい加減にしろ by 地蔵』


 自力で元の体型に戻らないといけなくなりました。僕は甘い物を食べ、大量の飯を食い、眠り、太りそうなことを毎日やりました。そして、ようやく元のデブ体型に戻り、再度、麗華に告白しました。


『麗華さん、お待たせしました。これでいいんですよね? 僕と付き合ってください!』

『すみません、私、豚野さんとお付き合いすることになったんです!』


 豚野は僕の同期、社内で僕と1、2を争うデブです。まさか、豚野に持っていかれるとは!?


『なんじゃそりゃあああああ!』


 翌日、凹んでいる僕のもとに健康診断の結果が届きました。



 僕は、糖尿病になっていました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リメイク【現代版の笠地蔵】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る