最終話

 あれから数年……という風に時間が飛ぶのは現実は起こってくれないようで、私たちは期末テストへの勉強に励んでいる。

「結構範囲大きくなりそうじゃない?」

「あれから一年の範囲を予習し終えた撫子が言っていいセリフじゃない」

 自習室からは離れた、人気の少ない場所に置かれた机と椅子。

 やっぱりこの場所が印象深く、何も言わないときはここが集合場所になる。

 余裕そうな撫子に恨みを持ちつつ、珈琲を口にする。

「一年の終わりに進路選択あるけど、もう決めた?」

「ちょっと待って。まだ解き終わってないから」

 今やってるのが選択問題で良かった。

 まあ多分、これ選ぶのが一番それっぽいかな。

「はい終わりっ。で、なんて言った?」

「進路選択どうするのって話。詩乃はどっか行きたい大学あるの?」

 行きたい大学か。

 今まで全く考えてなかったけれど、これなら面白そうっていう選択肢はすぐに思いついた。

 幸い、私理系だし。

「薬学部いって惚れ薬作る」

「ゲホッゲホッ」

 撫子が思いっきりむせた。口を咄嗟に抑えていたので、被害はどこにもない。

「だっ、誰に使うの?」

「…………」

 目の前にいる人物を手で指す。

 まあ、できたところでこの子に効くかは怪しいかな。

 詩乃の維持と私の薬の勝負になるか。

 副作用とか弱くしたいし、強い薬を飲ませたくないって思っているのもあって、私の薬の敗退は目に見えつつあるんだけど。

「私、女の子は好きにならないんだけど……」

「分かってるよ。だから、女の子が同性を好きになっても仕方がない薬を作るのが目標」

 そういうことにしておけば、今後の私にもチャンスがあるかな、なんて考えて。

 言ってて少し、いやかなり恥ずかしくなってきた。

「じゃあ逆に、撫子の方は考えてるの?」

 今までの質問で元々の会話を忘れていたのか、一瞬驚きと疑問が混じった顔が見れた。

「ああ、私ね。私は作家になろうと思って。お姉ちゃんずっと、作家になりたいって言っていたからね」

「成績も文系寄りだし丁度いい、と」

「……言い方に異議申し立てをしたいけど反論できない」

 ちょっと不機嫌になった顔で、撫子が言う。

 意識してると、コロコロと表情が変わって面白い。

「まあ、演じてるとかの表現がすらっと出てくるくらいなんだし向いてると思う」

「皮肉?」

「ちょっとだけ」

 撫子からのちょっかいを受けながら、問題集を解き進める。

 一か月後の期末に向けて、少しづつ勉強を進めていく。



――私たちの終末は、物語のそれと比べると納得していないことが多すぎる。

  自分の今がハッピーエンドなんかわからないし、もっといい終わり方があったのかもしれない。

  だからこそ、これでいい。疑問を持たずに理想に忠実であり続ける方が、私達らしいから――

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学校の期末。私たちの終末 @shizuku0204

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