狐、賭けをする

 うーん、俺の頭はあることでいっぱい。

 ぷらすこんからす……ぷらすこんしろ……でも俺がこんだから……かぁ……かぁは、いまいちだなー!

 授業中、頭の中でずっとこれがぐるぐるしてて、当てられた時に反射で「こんかぁ!」って言っちゃった。

 伏見先生に睨まれちゃったぜ!! 綾にーさんも俺の悩み知ってるくせに!


「このせくん、決まった~?」

「まだ~」


 ほにゃ~っとしのと笑いあう。いつも通り学校で勉強。

 夜は、しのに練習相手になってもらったり。だって次の夜祭は勝ちたいし!


「そういえば、蔦白さんと纏さんはどう~?」

「ふたりはねー、仲良しだよ!」


 蓮先生と白羽は、最初に会った日――話をしに行って。

 ふたりともぼろぼろで帰ってきた。なんかお互いの実力を知りたいとかなんとかで。

 で、それからは言いあいするけど仲良し。いや、言ってるのは蓮先生だけだな~!

 でも、琉珀さんと映澄師匠が何にも言わないから大丈夫なんだと思う。

 それに白羽は楽しそう! 夜祭ではつまんなさそーな顔してたけど、特訓の時は表情豊か!

 力が拮抗する相手がいるのはいいな、っていつも言ってる。


「今日も特訓~?」

「そう! 俺もねー! 色々上手になってきたし!」

「ふふ~、そうだね。いつかこのせくんと戦えたら楽しいかも~」

「だな~! でもしのに勝つのはまだ難しそ!」

「まだ、なんだね」


 しのは、何でも化けれる!

 一番すげー! ってなったのは波になったとき。俺達皆押し流されちゃったからな~!

 なんかめっちゃ強い妖にも10秒くらいならなれるっぽくて、俺達の仮想敵してくれる!

 なんて、楽しく過ごしてると。


「ここのひちゃん~」

「あっ、糸瀬~! って、そうだ! 言いたいことあった!」


 俺の背中を撫でるような声。糸瀬が教室に来た。

 そうだー! てか皆にバレてるからもう糸瀬に黙っててもらう必要ないしー!

 ……んっ!? でもこれ親父殿との約束どうなんだろな!!??

 ま、まぁいいかー!!


「なになに? ここのひちゃん、またアレしたいな~ってきたんだけどさ~」

「それだー! てか妖いっぱいで皆気づいてるし!! 黙ってる必要なかった!」

「あっ、気付いちゃったか~」


 残念、って糸瀬が緩く笑う。こ、こいつ知ってたなー!

 にんまり、瞳は楽しそう。ふふ、と笑って糸瀬が手を伸ばす。

 ちょっとぞわっとして、俺は一歩下がった。


「お?」

「な、なに?」

「……ここのひちゃんさ、この前夜祭にいたよね?」

「!」

「誘ったのに、自分で夜行作って……俺が、夜行においでよって誘ったのにさぁ」


 だから、って区切る。

 糸瀬の目が淡く輝いた気がした。


「次、うちとやろうよ。適当に四人目みつけてくるからさ」

「えー?」

「で、ここのひちゃんが負けたらさ、夜行解体してうちにくる」

「え?」

「マスコットとして」

「は!!??」


 マ、マスコット……!!??

 そ、そりゃ狐の俺はかわいいけどー!!


「ここのひちゃんが勝ったら~……うーん、なんか好きに考えておいて」

「いやいや! え!? な、なに一方的に!!」

「賭けよって言ってんの」


 なんで!? 突然すぎ!


「妖なら、賭けは受けるだろ?」

「えー! それは糸瀬のものさしじゃんー!」

「そうだよ。だから受けろよ」


 話聞いてないー!

 にやにや笑い、ちょっとムカツクー!!


「それとも、負けてマスコットになるのが嫌?」

「わー! 勝つのはこっち!! 勝負だ糸瀬!!」


 マスコットに、ぴぎゃ! ってなった俺は言い放つ。ああ~って顔をしのがしてた。

 大丈夫! 絶対ならない! 勝てばいいだけ!

 それに俺は、夜行の皆が、大事!!

 そしてこのことを、皆に話した! ら!


「こ、このせ~! お前は勝手に~!!」

「いや、気持ちはわかる。わかるけどね……」

「やっちゃった感しかないぜ~!」

「思いのほか、戦い好きだな」


 三人はうわーって感じだけど、白羽はいいぞいいぞみたいな空気!

 味方は白羽だけかっ!

 だってマスコットって言われたら引き下がれないだろ!


「そもそもこのせは」

「あうっ」

「糸瀬海貴……つまり、その夜行がどんな面子かわかってんのか?」

「あううっ」

「ほっぺよくのびるね」

「あうううっ」


 琉珀さんがほっぺむにむにする。次俺って映澄師匠に代わるし。蓮先生もするし。白羽もついでみたいに混ざるし! 柔らかいな、にこ! じゃないんだよ白羽も!

 確かに俺のほっぺはやわらかもちもちふにふにだけど~!

 ほっぺさすりながら、知らない~! って俺は答える。


「糸瀬海貴は吸精鬼だ」

「知ってる!」

「俺と殴りあって五分」

「それめっちゃ強いってことじゃん!」


 そう、と白羽が頷く。けど昔は、ってとこで。今は自分の方が強いって言いきった。

 そして、それにと続ける。


「トリックスター、三影 縞。月狂い、灰谷 迅……と」

「にやにやしてるのとぺこぺこしてるあのふたりだ!」

「にやにやはわかる。ぺこぺこ?」

「うん、すみませんって~」

「?」


 何を言ってる? みたいな顔した白羽。でも、まぁいいかって話を続ける。


「三影は騙しが上手い。引っかかるものは多いが持久力は低め」

「なら俺と琉珀だな」

「そうだね。仕方ない何とかするか~」


 役割分担さくさく決めてく!

 ふたりがするなら俺の出番じゃないな~!


「灰谷は純粋な暴力。あの爪と牙は脅威でもある」

「あー、俺だな」

「爪? 牙?」


 えっ、そんなのなかったよ?

 どういうこと? って俺は首を傾げる。白羽、説明頂戴! って見上げた。

 白羽はこくと頷く。


「……狼男だから、変身する」

「ほわっ! なるほど!」

「……こいつ連れては戦えないな。白羽に引率を任せる」

「引率……任された」


 引率!?

 白羽、なんか嬉しそうだし!

 俺はひとりでも大丈夫だぞー!!


「糸瀬は俺が相手をする……が、このせ」

「! 俺は何したらいいかな!」

「このせは、狐姿でいこう」

「なんで!?」

「俺が運べる。上をとれるのはそれだけで強い」

「なるほど!!」


 納得! それでいこ!!

 俺は早速、狐になる。ぽみゅって小さな音ひとつ。狐になると、俺は子狐~! って気持ちになっちゃうんだよな~!

 これで運ばれるってことは~、頭の上かな!! って白羽を見上げた。

 ジャンプして届くかなー? って思ってると白羽が俺を抱き上げて、肩の上に置く。おっ……!?

 なんとか、踏ん張れる!


「これで飛ぶが、しがみついておけ」

「がんばる!」


 今必要なのは、飛翔時の練習!!

 白羽が飛ぶのに、ぴゃあああ!!! とか!!

 ひゃああああ!!! とか!!

 叫びながら俺は耐えた。服の端噛んで捕まってみたり!

 そして。


「もう慣れた! 白羽の頭の上でも立てる!」

「それはやめておけ」


 俺はなんとか、耐えれるようになった!

 肩を踏み踏みしながらバランスをとる。右、左と勢いに合わせて体重移動!

 おっけー! そして飛ぶのを耐えながら妖力を練るのも練習!

 そしたら、しのがにっこり笑って協力してくれる。


「僕が仮想糸瀬するね~」


 葉っぱを持ってほわんと煙を纏ったら、そこに糸瀬――だけど、たぬきの耳としっぽ!

 それになんかほわんとした雰囲気!!


「妖気も似せるけど、完璧じゃないし5分しかもたないよ~」

「5分あれば十分だ」


 流石に妖力吸うのはできないけど~って言いながら、しのはその動きを真似てくる。

 白羽は、しのと戦うというより戦いの動きを俺に教えて、慣れさせてるって感じだった。

 ……うん、めちゃくちゃ頑張った!!


「このせ、俺の上でも動けるようになったな」

「へへーん! 俺めっちゃ成長速度早いから!」

「そうか。俺もお前がいるから飛び方が少し変わった」

「そうなの?」


 そんなの全然わかんないな~!

 白羽の肩を自然とふみふみしちゃう。白羽に乗るようになってからついた癖だ。

 ここ、ちょっとおちつく!

 ふわっと夜空の中で白羽が立ち止った。急ブレーキかけても、俺はもう落ちない!


「このせ、勝とうな」

「うん! 絶対勝つ!」


 俺は鼻先をその頬にちょんとつける。

 俺は、マスコットにならない。白羽と――皆と、夜行を組んでるんだから!

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