第1話 レベル2

スライムとの距離、残り五メートル。


「へなへな弾がダメなら――鈍器だ」


地面を蹴る。無駄のない重心移動。殺し屋時代に叩き込まれた接近術は、世界が変わっても錆びていない。


スライムがぷるん、と揺れた瞬間。


ゴッ!!


ライフルの銃床が直撃する。


ぐしゃり、とゼリーのような体がひしゃげ、核のようなものが露出した。


「そこだ」


もう一撃。


スライムは弾け、淡い光の粒になって消えた。


同時に、脳内に機械音。


【経験値を獲得しました】

【スナイパーライフル Lv1 → Lv2】


「……は?」


再びライフルを生成する。


今度は弾を込め、引き金を引く。


パンッ!!


さっきより明らかにマシな音。

弾はまっすぐ飛び、小岩に当たって小さく砕けた。


「……悪くねえ」


その瞬間、またあの声。


『おめでとうございます☆ へなへな卒業ですね♪ でもまだ“豆鉄砲”ですけど(*´艸`)』


「ぶっ飛ばすぞ」


『神を? 無理です☆』


チッ、と舌打ち。


だが、マークの目はもう笑っていた。


「レベルを上げりゃいいんだな? 上げてやるよ。弾道計算も威力も、全部取り戻してやる」


その日から、山に銃声……いや、最初は鈍器音が響き続けた。


スライム十匹。

ゴブリン三匹。

ウルフ一匹(物理)。


レベルは着実に上がっていく。


【Lv5:弾速上昇】

【Lv10:スコープ解放】

【Lv15:貫通付与(小)】


Lv10になった瞬間、生成されたライフルに本物のスコープが現れた。


マークは息を止める。


遠く、丘の向こう。

暴れるオーク。


風向き。距離。高低差。


すべてが脳内で自然に組み立てられる。


「……懐かしいな」


引き金を引く。


ドンッ!!


今度は山に響く重低音。


数百メートル先のオークの額に、正確に穴が空いた。


数秒遅れて、巨体が崩れ落ちる。


【クリティカルヒット】

【称号:再誕の狙撃手 を獲得】


マークは小さく笑った。


「最弱武器だぁ? 笑わせんな」


銃は時代遅れかもしれない。


だが、扱うのが“最強の殺し屋”なら話は別だ。


その頃、どこかの神界。


タブレットを操作しながら、あの声の主がくすくす笑う。


『あらあら……思ったより早いですね。これは“魔王討伐ルート”に配置替えしたほうが面白いかしら☆』


知らぬ間に、物語の難易度は上昇していた。


山の頂で、マークは次の標的を探す。


その瞳は、すでに“獲物を仕留める目”だった。


丘の向こう、オークの死体に群がる影。


双眼鏡代わりにスコープを覗いたマークは、わずかに眉を動かした。


「……でかいな」


通常の倍はある巨体。

黒ずんだ皮膚。

背中には骨で組まれた装飾。


【オークロード Lv28】


「急にボスかよ」


脳内に、あの声。


『配置替えです☆( *´艸`)』


「ふざけんな」


オークは、ズシンズシンと歩いている。


――一回でも外したら、こちらに気付かれる。


殺し屋人生のどんな時よりも、ドキドキする。


『あれぇ?緊張してるんですか☆?"伝説の殺し屋さん"!(=^・・^=)』


俺は返事をしない。あいつは小さくため息をつく。


スコープ越しに、オークロードの呼吸を見る。


肩の上下。

歩幅のリズム。

骨装飾の揺れ。


「……風、右から二メートル」


頬を撫でる空気で読む。


距離三百八十。


高低差、わずかに下。


弾速上昇済み。

貫通(小)。


「額は硬い。なら――」


視線がわずかに下がる。


鎖骨の隙間。

心臓へ続く一点。


『あ、そこ狙います? でもぉ――』


「黙ってろ」


息を吐き切る。


止める。


鼓動が、消える。


引き金を絞る――のではない。


“圧を抜く”。


ドンッ!!


低く、重い衝撃。


弾丸は骨の隙間に吸い込まれた。


一瞬遅れて。


ズドンッ!!


オークの背中に弾が当たる。しかし――


「…浅い」


心臓を貫いてもなお生きている。これが、ボスクラス。


『あ~伝え忘れてましたけど、ボスには形態変化があります!(^^)!』


「――先に行ってくれよ。」


オークの体は、黒いうろこで包まれていく。防御力が上がった


『防御力が上がっちゃいましたよ☆そんなレベル15ぐらいのへなちょこで貫通するのかな( ^)o(^ )』


「黙れ」


オークが俺の存在に気付く。走ってくる。危機的状況――


こんな時、殺し屋だった俺は、どう対処してたんだ?


「どう対処してたんでしょうかね  ^^) _旦~~」

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魔法や剣が強い異世界に転生したが、俺は銃で無双することにした おいしい @hakudamon

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