第125話 竜に乗れ!

 これまでの戦いを見てもグオンが強くなっているような気がしたので、冒険者ギルドに行ったついでに職をチェックしてもらったら、やはりドラゴンナイトに上がっていた。


 Xランクにも上がった。これでラシアに何かあった時はグオンが帰還石で帰れる。何かあっても全滅だけは防げるので、これに関しては本当にありがたい。


 帰還石の事を知ったグオンはなんとも言えない表情で、「この石にこんな効果があったんすねー」と言っていた。


 知らなかったらそんな物だろうとラシアは思うので、とりあえず五つほど帰還石をグオンに渡しておいた。


 それでグオンがドラゴンナイトになったので、ドラゴンに乗って火力を上げてもらいたい。だからドラゴンをとっ捕まえに行くのが本日の目的だ。


 ダンジョンは竜の巣。


 天より高く、大地より力強い大木そのものがダンジョンで、竜ばっかり出てくる場所だ。


 このダンジョンも、ゲームをやった事のある人なら知っているかも知れない、不思議ダンジョン系のダンジョンだ。


 入る度に構造が変化し、ドラゴンばっかり出てくるので……ぶっちゃけ超級並みの難易度はあると思う。


 ただこの世界ではゲームとの違いがあり、ダンジョンが再生するタイミングで作り替えられるので一日おきに変化するとの事だ。


 あとは普通に20階層とかあるので、攻略するならアホほど時間がかかるし超危険。


 ボスはカオスドラゴン。こいつに関しては時間湧きのボスよりも強かったりするが、今回は踏破するのが目的ではないので行かない。


 全状態異常無効とかいうふざけた装備を落とすのでチャレンジしたいが……全員がラシアと同じクラスの職になったらでいいかなという感じだ。


 どうやってグオンが乗るドラゴンを手に入れるかというと、二階層に降りたら絶対にある竜の祠という場所があるので、そこに竜酔いの酒を捧げる。すると、プレイヤーが乗れる竜がいる場所に行ける。


 赤竜、青竜、緑竜、灰竜、白竜、黒竜、そしてゲーミングドラゴンこと虹竜がいる。


 赤竜は火力。青竜はバランス、緑竜は速度、灰竜は防御、白竜は聖属性の魔法防御、黒竜は闇属性の攻撃といった感じで、魔法と似たような感じで色分けされている。


 で、問題はこいつ。虹竜。他の竜の色を全部混ぜたように派手で、能力も他の竜に比べて1.25倍ほど高い。


 じゃあ……虹竜でいいんじゃね? となるが……ゲームだと出てくる竜はランダムなのだ。


 そのエリアに行くと乗用車ぐらいのドラゴンが三匹出現し、そこから選ぶ。エリアから出るとリセットされて違うドラゴンがいるのだが、入る度に竜酔いの酒がいる。


 虹竜は出現確率が0.01%とかいう低確率なので、滅多にどころか、ほぼ出ない。


 だからゲームだと竜酔いの酒は需要があり、そこそこの金額で取引されていた。


 ラシアもドラゴンナイトをやっていた時代はあるが、クリティカルハンマー特化型なので騎乗スキルは取れない。だからドラゴンには乗っていない。


「という訳で、竜の巣に行きます。ダードさん、ビエットさん、エリエスさんは残った方が安全ですが、どうします?」


 聞くだけ無駄、というぐらいに行く気満々だったので、全員で竜の巣に向かう。今回は入ってすぐに竜がいる事も多いので、グオンが借りている家から全員がフル装備で冒険者ギルドへと向かう。


 竜の巣も少し遠いようで、一度王都に行ってからそこのポータルに入らないといけない。だから、この手間をなくすのに王都を拠点にする冒険者は多いのだ。


 ラシア的には王都の受付に並んで神経をすり減らしてダンジョンに潜るなどナンセンスなので、ルインエルデの冒険者ギルドで良いのだ。


 そしていつもの受付嬢がいたので並ぼうとすると……並んでいた冒険者達が蜘蛛の子を散らすようにどこかに行ってしまった。


 きっと……Xランクになったグオンが怖いのだろうと思って受付に行くと……受付嬢も少しビビっている。


 だが、どうやら原因はグオンだけではなかったらしい。


「よっ、ようこそ……ルインエルデの冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用でしょうか?」


「あのですね……知らない仲でもないのにそんな対応されると凹みますが!?」


「えっ? …………もしかして、その声はラシアさんですか?」


「どこからどう見てもラシアでは?」


「……どこからどう見ても見えませんが? 髪の毛しか共通点ありませんけど?」


 改めて自分の姿を見直すと、聖銀鋼の鎧に身を包んでいる。兜はフルフェイスで少しギミックがあるので、魔力を流すと口元も隠され、目元もサングラスみたいなのが降りてきて、ガ○ダムっぽい感じになるので全く顔が分からないのだ。


「何というか……ラシアさんって本当に白の騎士だったんですね」


「自分で名乗った覚えはないのと、鎧しか白い部分がないという……」


「最近だと白獅子とか沈黙のラシアと呼ばれていますよ?」


「沈黙ってただの特徴では?」


「格好いいと思いますけど? ルインエルデでは沈黙のラシアと呼ばれている事が多いですね」


 ラシアは思う……受付嬢が言っているので言えないが、沈黙のラシアとかもはや悪口のレベルではないかという事だ。


 太ってる人に豊満とか、はげてる人に無毛とか、そのレベルだと思うので切実にやめて欲しい。なんか普通に恥ずかしいのもあるからだ。


「受付嬢さん。恥ずかしいので流行らせない方向でお願いします」


 そんな話をしながら、ラシアは受付を済ませて王都へと渡った。


 そんなラシアを受付嬢が見送っていると、いつものように隣から話しかけられる。


「ラシアさんって本当に白の騎士だったんですね。何というか……鎧だけでも凄まじいですね」


「私達から見ても他の人と桁が違うのが分かるから、本当に凄い装備なんでしょうね」


「でも中身はラシアさんなので、沈黙のラシアって感じが似合ってますね。先輩も無骨な受付嬢とか言われているので気が合うかも?」


 自分でも無骨なのは分かっているが……改めて言われるとむかつくし、ラシアの気持ちも理解できた。沈黙とか無骨は悪口のレベルだ。受付嬢は沈黙のラシアは流行らせないと心に誓い、言い返す。


「私が……無骨の受付嬢なら貴女は貧乳の受付嬢ね。お互いに似合ってるじゃない」


 それからどうなったかは分からないが……二人とも後でギルマスに怒られたとかなんとか……


 二人がそんな事になっている間にラシアは王都のポータルに並んでいたのだが……目立つので知り合いに見つかった。


「よしっ! おったー! ラシ、ダンジョン行くんやろ! ウチも連れて行って!」


 急に話しかけられびっくりしながらそちらを向くと……フル装備のティーガーがそこにはいた。


 聖騎士の仕事でいるのかなーと思って聞いたら違うようで、本日は休みで、ラシアが来るのを予測して待っていたという事だ。


「……どこ行くか、分かってるんですか?」


「場所は知らん。けどドラゴン捕まえに行くんやろ? この前そんな事言うとったし、グオンがドラゴンナイトっぽいからな。それを試しに行くやろ?」


 なんで分かるんだと頭は痛くなるが、感心してしまう。確かにドラゴンナイトにドラゴンに乗らないの? とは聞いた事があるが……そこから予測して今日を割り出し、ここにいるのだと思う。


「前にラシがダンジョン行ったのは聞いとったからな! そこから計算して本日を予想した訳や! ラシの性格は気になったら試したいと見た! という訳でウチも連れて行って!」


 えー……と思いながらクランメンバーの方を見ると全員が困った顔をし、明らかに心を一つにしてラシアにお任せします、という感じだ。


 さすがにスキルの事もあったり、聖騎士の都合もあったりするだろう。


 ラシア達は一度並ぶのをやめて、ティーガーと話をする事にした。


「竜の巣に行くので、私的にはティーガーさんにいてもらった方が心強くて良いとは思いますが、スキルとか聖騎士の仕事って大丈夫ですか? 今日中には帰れると思いますが……場所が場所だけに……」


「大丈夫や! 部下はおかんに任せてきたし、上から命令が来てもウチを狙って来る事はない。来たとしても、今日明日すぐ行ってこいはないしな。スキルは気にせんでええ。ウチは元から、見たら覚えるんやし気にせんでええやんけの精神や」


「こちらのクランとしても、秘匿しているスキルはないので問題ないですが……」


「ラシはそんな感じやな。蟻の巣の時もそんな感じやったしな。あの時ラシが使ってたスキルは誰にも言うてへんから大丈夫やでー。ほんでグオンがドラゴンナイトやったらウチのスキル教えたるから、連れて行った方がお得やで!」


 確かにティーガーの言うとおりだとラシアは思う。ラシアはスキルの名前などは覚えているが、取っていないものは使えない。ティーガーが前に使っていたドラゴニックパワーとかがまさにそんな感じだ。


 それに二階までとはいえ、何があるかは分からない。だからティーガーのような強者がいた方が安全だ。竜酔いの酒も予備がある。


「分かりました。ティーガーさんも一緒に行きましょう。ですが私もその場所は、こちらの世界に来てから行った事がないので、どういう風に変化しているのか分かりません。そこだけは覚えておいてください」


「よっしゃ! 分かったで。十分に注意して気合い入れていくわ! ほな皆、よろしゅう頼むで!」


 少し不安な面もあるが、ラシアのパーティーにティーガーを迎え入れ、竜の巣に向かう事になった。

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