第124話 料理アイテム

 ラシア達LLLは、次の日には霧風のダンジョンを踏破した。


 七階層にいるボスは虹蜘蛛というボスなので、ラシアが戦うと少し過剰戦力だ。ノアやグオンが出ても楽勝だと思うので、ダード、ビエット、エリエス、フォルグ、パドロワの五人に任せた所、少し危ない場面もあったが無事に倒す事ができた。


 フォルグは冒険者になって長いので、やはりダード達三人とは経験が違う。それにパドロワの支援もあるので勝てたといった感じだ。


 ただ三人の動きもかなり良くなっているので、今なら問題なくウルフマンも倒せると思う。


 それと昨日の事だが、ノアと話をした後にグオンとも話をした。Xランクの事だ。


 グオン的には実力的にまだ上がりたくない感じではあったが、ラシア的には上がってくれた方が助かるし、Xランクになったからといって強くならない訳ではないのだ。


 ダード達と同じで、これから強くなっていけばいい。それはラシアも同じだ。


 ラシアの説得と言うほどでもないが、話を聞いてグオンも思う所があったのだろう。Xランクに上がる事を決意した。


 今は霧風のダンジョンから帰還し、次の日になる。


 ラシアの本日の予定は、食材アイテムが手に入ったのでその実験だ。ノアはリレッサとティアと買い物に行っているし、グオンはXランクになるために、ラシアがこの前受けた講習を聞きに行っている。


 ダード達三人組は虹蜘蛛の素材が手に入ったので、それで盾を作りに行っているし、他のメンバーはお金が入ったので、武器防具を買いに行ったり娼館に行ったりしている。


 男の体のままだったら、気になるとか言えば連れて行ってくれるとは思うぐらいには皆がいい人だ。


 そしてラシアはセレットから新品の錬金釜を売ってもらい、ナットンと共に料理アイテムの製作だ。


 ちなみに前に古城ダンジョンから持って帰ってきた錬金釜だが、あれは街などで売っている錬金釜の元になったものらしい。


 街などで売っている物は危険な物とかを錬金できないように性能をセーブしてあるが、あれはそういう制限が一切なく、けっこうヤバくて相当貴重な物らしい。この国で十個もないそうだ。


 大丈夫? とラシアは思うが、セレットさんもその弟子もその性能を満喫したいそうだ。


 巧妙に外観をいじって、他の錬金釜と分からないようにしてある。


 第二、第三のロワンテになるような事はやめてねと祈るばかりだ。


 で、話は戻るが、ゲームならステータスにバフがかかるアイテムも錬金釜で作る。


 この辺は製造職ではなく全てのプレイヤーが作る事ができ、幸運値で成功率が決まるのでたぶん成功する。


 だけど懸念がない訳ではない。なんとかジュースみたいなアイテムを作ったりすると、ゲームのイラストならコップとかグラス等があるが……現実で考えたらジュースを作ってコップまで作られる事はない。


 だから飲み物を作ったら、きっと釜の中にたまっているのだろうなーと思う。


「友よ。何を作りますか?」


「次のダンジョン用に竜酔いの実で竜酒を作りたいけど……失敗したら数が厳しいから、まずはラッキーベリーでラッキータルトを作る」


 ラッキータルトの材料は、


 高級小麦粉

 バター

 高級蜂蜜

 ラッキーベリー


「なんだけど……分量が分からない。ナットンは分かる?」


「一回目なので、とりあえずぶち込んでみては?」


「ポンコツ過ぎる……」


「私もそう思います。ドンマイ」


 それで良いのかとは思うが……たぶん適当に入れたら失敗する気がする。高級小麦粉はダンジョンから出ると袋に入っているので、たぶん大丈夫だが……


 ラッキーベリーが問題。一個ずつ取ったので一個が一つのアイテムになっているのだが……ゲームのイラストだと何個か描かれていて、それで一つのアイテムなのだ。


 三つだったか……五個で一つだったかまでは覚えていないので、とりあえずナットンが言ったように適当にぶち込んで……心の中で詠唱し、素材の力を一つにする。


 すると……ボン! と音が鳴った後に黒い煙が上がり失敗した。


 釜の中には、ゲームでも料理が失敗した時にできる「炭になった物」というゴミができた。


「やっぱりか……そういえばこれってナットンに渡したらアイテムに交換してくれたけど、今でもできるの?」


「できますよ。数が足りないので集めてもらえればこちらで生成します」


 それから何回か失敗して、ようやくラッキータルトが完成した。


 数で言うと、ベリーの数は十個が正解のようだ。


 ただ……気にしてはいけない事だが、何故か完成したタルトの中には十個以上のラッキーベリーがあるような気がするのだが……きっと気のせいだ。


 料理アイテムもこの世界で再現できる事が分かったが、少しナットンから忠告が入る。


 この料理アイテムは……食べ物ではあるが、どちらかというと魔法に近い物とのことだ。


「まー。ステータスが上がるんだから普通の食べ物とは違うよねって話か」


「それもありますが……何というか回復薬とか魔法に本当に近いです。あまり気にしなくてもいいですが、栄養みたいな物は存在しないので、食べてお腹は膨れますが、こればかり食べていると餓死します」


「……マジで?」


「はい。逆に言えば、太らない甘味と考えればとても良い感じの食べ物です」


「食べて大丈夫とは思うけど……回復薬とかと同じ位置なら大丈夫か」


「はい。ただ原材料とか手間の事を考えると、物珍しさで一儲けはできるかも知れませんが、皆がやり始めると儲けは出ないと思います」


「誰でも作れるしな~。でも高級小麦粉とかダンジョンで取った物を外で売ってパンを作ってるけど、それも栄養とかないんだろうか?」


「友よ。私は最近こっちに来たばかりなので、知る由はありません」


「まーそうか」


「それは冗談で調べています」


 ダンジョンで取った食材アイテムをこっちの世界で調理すると、ちゃんと栄養とかはあるとの事。


 ナットン曰く、その辺は錬金釜が影響していて、栄養とかそういうのを魔力で一時的に増幅して、人の能力を強制的に上げているんじゃないかという事だ。


 ナットンがいたボルトルデにもそういう薬があったとか何とか。


 なるほどなと思いながら、ラシアは色々と料理アイテムを作り、必要なアイテムをナットンに書いてもらう。


 小麦はダンジョンから手に入る時は袋に入っているので、街で買った奴もそれに入れて分量を調整すれば良いからいいのだが……液体とかベリーとか、そういうのが本当に問題だ。


 魔法攻撃力を上げるレーズンパイというアイテムがあるのだが……どれだけブドウを入れれば良いか分からない。


 ゲームのイラストではヘタごと描かれていたので入れてみるが……数が合わないのか、何回やっても成功しない。


 ジュース系のアイテムも同じだ。果実と精製水と蜂蜜で作るのだが……ブドウみたいに数のある果実は本当に成功しない。


 グレープフルーツみたいな大きい奴は切ったイラストだったのを覚えているので、半分に切って入れて作ったら成功した。


 だけど……コップに入って出てくる訳ではないので、釜をひっくり返してコップに注ぐ必要があるし、コップを入れて錬金したら混ざってゴミになるし、毎回洗わないと駄目なので超絶めんどくさい!


 今回の実験で料理アイテムを作れたのは本当に大きいので、暇な時に少しずつ作って超級への挑戦に繋げていきたい。


 そして次のダンジョンに向かう為のお酒を作った。


 竜酔いの実

 蜂蜜

 酵母

 聖水


 これで竜酒ができる。


 ただイラストだと実が二つ描かれていたので、実を二つほど入れて錬金したら上手くいったが……竜が酔うほどの酒なので匂いがきつい。


 ラシアは酒を飲むとヤバいし匂いでもヤバそうなので、ナットンに頼んで窓から匂いを逃がしてもらい、ラシアが作る度に瓶に注いでもらった。


 そしてようやく全員分の竜酒と、もしもの時用に二本ほど余裕を持って作っておいた。


「ナットンがいてくれて良かった」


「私もそう思います」


 自分で言うのもどうなのかなーとラシアは思うが、本当の事なので礼を言って一階に降りていく。


 一階に降りると、おやっさんが街の事が書かれている新聞みたいな物を読み、フウコウが前にラシアが古城から持って帰ってきた本を読んでいた。前はラシアの部屋に置いてあったのだが、読み終わったので、食堂で読みたい人がいれば読めば良いという感じで置いてある。


「またなんか破壊するかと思ったが……今日は何も無かったな」


「おやっさん……そんな毎回壊しませんよ」


「何かある度に壊してる奴の言う台詞じゃねーよな」


 これ以上、過去の事をほじくり返されたらたまった物ではないので、ガロニア関係の客であるフウコウの方を向くと目が合った。


「おーラシアにゃ。元気そうで何よりにゃ……」


「どうも。フウコウさんも元気……そうではないですね」


 ぱっと見た感じだが、なんかイマイチ元気がない。おやっさんにやられたのか? と思うがそんな感じでもないので話を聞いた。


「ここに来る前ににゃ……天気良かったからあくびしたら……」


「あくびしたら?」


「ちょうど鳥が飛んでいてにゃ……そのう○ちが……」


「……まさか口に入ったとか言いませんよね?」


「ふっ、不幸にゃ……それはそうと、にゃんかさっきからやたらと良い匂いがするにゃ!」


 不幸なのも嫌だけど、それに慣れてしまうのも嫌だなーとラシアは思う。


「少し色々と作っていたので食べてみますか?」


「食べるにゃ!」


 そう言うので、おやっさんに厨房を借りて、さっき作ったラッキータルトをラシア、おやっさん、フウコウの三人分に切り分ける。


 おやっさんはガロニア関係には用がない限り近寄らないので、ラシアに礼だけ言ってそれを受け取り食べ始める。


 ラシアもフウコウの近くに座り食べ始めるが……想像以上に美味しいという感じだ。


 目の前の猫獣人も目をキラキラさせていて、とても美味しいようだ。


「これ! マジで美味いにゃ!」


「それは良かったです」


「今日はここに来て良かったにゃ! いいことあったにゃ!」


 大げさだなーとは思うが、本人がそう言うならそうなのだろうと思いラシアも食べていると、リレッサやダードやグオン達が狙ったかのように帰ってきたので、本日頑張って作ったラッキータルトは全て消費されてしまった。


 それから数日が経ち、竜酒を荷物に加えたラシア達LLLは、また新しいダンジョンへと向かった。

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