第64話 勇者が勇者になった理由3
「でも結果的に物理で消すことになったんですけどね」
それに、思ったよりも帝国の人達って会話にならなくて……と苦笑いをする勇者に『だろうな』と頷くシリウス。
「話の続きとしては、ただがむしゃらにS級冒険者を目指して依頼を受けたんですよ。ギルドの職員に貢献度とかも必要って言われたので採取でも護衛でも何でもやりました。ダンジョンにも入って、強くなって、皆で励まし合いながら。魔法を子爵家に撃ち込もうとする賢者を止めたり、帝国の魔道具を森で使って魔素溜まり作ろうとする聖女を止めたり、暗殺に入ろうとする怪盗を止めたり……苦労しました」
「止める必要あったか?」
「流石に仲間を犯罪者にしたくはなかったので」
バレなければ問題無いという考えのシリウスより、だいぶ人格者である。
「そのうち勇者パーティーとか呼ばれるようになって、とうとうS級になれたんですけど……その時に名指しで理由までつけて依頼拒否してやったんです。アレって全ギルドに通達されるし国の上層部にも話が行くじゃないですか」
「そうだな。私は帝国まとめて拒否してるが…………むしろ君達がそうしなかったのが驚きだ」
「あぁそれは、S級の依頼料って高額なので帝国からお金むしり取ろうと思って」
それも復讐の一環であるらしい。
「まぁ帝国については関わるだけアレなんですけど、S級に拒否されるような貴族って、周りからも避けられるというか、見下されるというか、社会的に終わるじゃないですか?」
「確かに」
「その結果なのかな?スタンピードで潰れちゃったんですよ帝国子爵領。まぁ、僕らが依頼を拒否したのが原因と言えば原因ですかね」
「あぁ、冒険者達が出ていったのか」
「『まともに仕事する』冒険者がですね」
間引きが行われずにスタンピードを起こしたらしい。
帝国自体が元々スタンピードが起きやすい土地なので冒険者の流出は避けなければならないのだが、信じられない馬鹿さを持つシリウスの異母兄がそれに対処するわけもなくあっさりとモンスターの波に飲まれたようだ。
「そこで、僕らの復讐は終わったんですけど………復讐だけじゃなく共和国を強くすることも目標にしてたんですよ」
帝国相手でも強く出られるように、悪いことは悪いと言えるように、共和国を強くすることも勇者達の目的だった。
勇者は彼等の村があった土地を買い取り勇者パーティーの拠点として屋敷を建て、共和国内の問題を解決していったのだ。
「あぁ、それで時々共和国から留学生が来ているのか」
「はい。王国の学園には本当にお世話になってます」
勇者は、留学して帰ってきた子供達から広まっていたのでシリウス教授のことは知っていた。S級冒険者なのに学園で教師をしている変な人という印象だったのだが、まさか共和国がスタンピードで危ないタイミングで現れて一瞬で解決してしまうほどの実力者だとは思っていなかった。
モンスターの数が多すぎて無理だと思った時、勇者は『復讐なんてしたからバチが当たったのか』と思い始めていたのだ。
それを「邪魔」の一言でどうにかしてしまったシリウスを見て『神様って森に居るんだ』と惚けてしまった。
まぁ、その後シリウスが元帝国侯爵家庶子だと知って罪悪感(シリウス)を感じることに罪悪感(村人達)を感じたりと忙しかったのだが。
「――実を言うと、今日教授に再会して『言うべき時が来たんだな』って思ってたんです。どうやって話を切り出そうかなって。元庶子というのは知ってましたけどあんな酷い扱いを受けてたのは知らなかったので、教授のお兄さんが亡くなる理由を作った僕は許されないだろうなって」
「いや、むしろ良くやった。どんどんやれ」
「教授が教授で良かったです!」
悩みもなくなり、笑顔全開の勇者が復活した。
ここまで聞いて、あまりにも重い話だったシリウスは、きちんと聞きながらも少し心を軽くしようと全く別なことを考えていた。
(学園物より勇者達の旅に恋愛要素を入れた乙女ゲームのほうが売れたんじゃねぇかな?ほら、聖女がヒロインで賢者と怪盗がライバル的な…………あれ?勇者パーティーってまさか女性陣の方が過激か?)
気が付かなくて良いことに気が付いてしまったシリウスは、苦労している勇者にそっとハーブティーの缶を渡した。
「え、くれるんですか?ありがとうございます?」
何故急にお茶の缶を渡されたのかわからないが、とりあえず貰ってお礼を言った勇者だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます