夢物語

@Suzuki_Tact

第1話 ハーフエルフのブルー

 あるところに“ブルー”というエルフが居た。


 彼女は世にも珍しい竜族とのハーフであるが、本人がその事を知るのは物語のちょっと後の事になる。というのも、彼女が住んでいるのはエルフの里のはずれ(厳密に言えば外側)にある石と木材で作られた館で、普段はほとんど里のエルフと交流が無かった。彼女が生まれた際、族長が子供のいない夫婦にブルーを託した。それゆえ彼女は養父母を実の親と信じて育ち、30年の年月が経過していた。普段はほとんど森との交流もなく、他人と接触しなければ自然と疑問も発生しない。そんなルーチンワークな日常をブルーは過ごしていた。


「さて、今日は“フローティング”の呪文をしようか。」


「はい、先生。」


 館の前にある石畳の場所で、今日もブルーは魔法の練習をしていた。先生と言われたのは人間のスペルユーザーで、ブラッドと名乗っていた。人間としてはかなりの腕であり、腕が良すぎて魔術師ギルドとそりが合わず、街には住んでいなかった。ブルーの館から30分ほど離れた川のほとりに掘っ立て小屋を建てて住んでいる。


「詠唱と魔法陣はこう、ね」


「わかりました」


詠唱が終わると二人は、ふわっ浮き上がる。


「ブルーさんはほんと呑み込みが早いよね。」


「先生が良いからです!」


「今日はこれくらいにしようか。」


「ありがとうございます。」


その時、すっと強い風が吹きぬけていった。


「?? なんか森がザワザワする。ちょっと様子を見に行ってくる。」


「気をつけてね、何かあったら言ってね。私は小屋に戻ってるから。」


「先生ありがとう!また明日ね!」


「ハイ、また明日。」


ブルーはブラッドに挨拶をすると、元気に森の入口の方へ走り出した。


*************************************************************


「おい余所者は勝手に入るなよ」


 その日の当番であったラムサスが出入口の番をしていた。日々鍛錬をかかさないラムサスは、エルフにしてはいい身体をしている。緑色の革鎧を着て、ロングソードを腰に下げている。左利きなのか木製のラウンドシールドは右手に持っている。


「いやいや、人探ししていてね。教えてくれればエルフの森には入らないよ。」


 冒険者風の複数の男女が森の入口から奥をのぞき込んでいる。先頭の鋭い目つきの男が馬を降りる。隻眼なのか左目を黒い眼帯で覆っている。


「青い髪のエルフの女の子を探しているんだ。青い髪とか珍しいから心当たりあるのじゃないかい?紹介してくれればお礼は弾むぜ。」


「・・・そんなエルフは森に居ない。とっとと帰れ!」


 ラムサスは男をにらみつける。男のこの辺では珍しいオニ族のようだった。オニ族は額に小さい角が生えている。そして肌の色がやや濃い。またオニ族は独特な衣装を着る。あまり大陸ではみないデザインだ。


「隠さないで教えてくれよ。頼むからさぁ。」


 他の仲間は騎乗したまま上からラムサスの様子を伺っている。隻眼の仲間は男女5人いる。


「おーい、ラムサスー。どうしたのー??」


 その時遠くからブルーの声が聞こえてきた。ラムサスが振り向くと、ブルーがぱたぱたと坂を下ってくるのが見える。


「こっちに来るな!」


ラムサスがブンブン手を振る。ブルーは、妙な雰囲気に気が付き立ち止まる。


「いるじゃあないか」


隻眼の男がブルーの方へ歩き出す。騎乗の二人もブルーの方へ機種を向ける。


「ちょっと!やめろよ!」


ラムサスが駆け寄ろうとすると、こっちは男二人が通せんぼする。


「お兄さんには用ないで。」

「邪魔せんといてや」


「お前ら、ただで済まさないぞ!」


「おーおー威勢が良い事で。」

「試してみるかい??」


ラムサスはロングソードを抜き払った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る