概要
届いたのに、開けられない。――その怖さごと、棚に置いた。
段ボールのガムテープを剥がす音が、少し乱暴に聞こえる。届いたのは薄い児童書。小学生の頃に見た教育映像の“ある場面”が、中年になった今、急に浮かび上がって離れなくなり、探して見つからないまま原作だけを買ったのだ。タイトルを見た瞬間、視聴覚室の匂いと椅子の冷たさが戻り、体育祭のトラックと匍匐前進の砂が脳内で再生される。怖くて開けない。それでも捨てない。買ったことが、いまの自分の精一杯の“近づき方”だから。
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