第7話

「近頃、国王が跡目を決めるという動きがある。候補者は3人。誰を選んでも大きな問題はない。だが、4人目の候補者の場合は国が荒れる可能性がある」


セロスターは、ルードに命令を下した。


次のターゲットは、少女。


先代王の隠し子。それ自体に脅威はないが、今の政治体制に不満を持つ集団が担ぎ上げると内乱の危険性あり。


後顧の憂いを断つ意味で、処分が望ましい。


「今の国家は不安定だ。あらゆる可能性から、破滅を取り除く必要がある」


その両肩に責任があると、セロスターは伝えた。


僕はいつも通りに脳に情報を叩き込んだ。

座標は王都の中央から川沿いに進んだ建物。


ここを狙うのであればと、逆算をして僕の位置を決める。


天気は曇ったり晴れたりの不安定で、視界不良であったが僕には関係ない。


むしろ、狙撃先を悟られないという点では好都合であった。


仕事はびっくりするほどに、実に簡単であった。


流れ星を、見つけられるほどに。


✴︎

僕は家に戻ると、半ば強引に押し付けられた編み物を再開した。


曰く、趣味を持つことは人間を豊かにするだそうだ。


逆説的に、僕の人生は豊かでないことを主張しているようで気に食わなかったが。


それでも否定はできず、それを受け取った。


どうせやるからには綺麗に、素早くこなすつもりだ。


約束の日曜日、彼女は来なかった。


彼女だって忙しい時はあるだろう。

前にも、2時間程度遅れたこともあった。


だから、一日すっぽかされたことはそこまで気にしていない。


だけれども、連絡がないのは珍しい。


翌日僕は、孤児院へと足を運んだ。


どうやら彼女は、王族の隠し子で、何者かに暗殺されたらしい。


どうだ、アッシュくんも花を手向けてくれないかと寮母が声をかけてきた。


僕はなんと答えたのかは知らないが、花を渡したのは間違いない。


僕は丸一日、食事も取らずに考えた。


僕は、やはり兵器だった。


味気ない、つまらない、くだらない、兵器だった。


であるのに、人間であることを求めた。


ああ、僕は完全なる兵器であったのに。

ひとたび願いを持ってしまったがゆえに。


兵器でいることすら、叶わなくなった。


僕は正義の仮面を被って目を瞑るつもりもないし、翻って悲劇のヒーローで同情を乞うつもりもさらさらない。


僕を支配したのは、己という存在への深い失望。


僕は一人になれる場所を探した。

つまらない兵器のゴミ箱に相応しい場所。

ハンドガンを左手に据える。


僕は、生涯で初めての、誤射をした。

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僕が鉛を放つまで @beniyuzu

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