ツキヨムコンは、「成田良悟さんが書いた<序章>の続きを書く」という設定上、通常よりも制約が多いコンテストです。<序章>および<登場人物>で予め示されている人々および設定を踏襲・登場させようとすればするほど、その制約は強くなります。
しかし、本作はそんな制約をものともせず、いや制約をきっちり守りつつ、壮大なスケールを実現してみせた意欲作です。驚くべきは本作に登場する人物は、ほぼ前述の設定に記載がある人たち。台詞回しも<序章>の設定を守っています。その代わりに、本作はなんと「ひと月ごとに世界が変わる」という長編にもなりえる設定が付与されています。登場人物を既存キャラクターのみにして、舞台設定を壮大にする。舞台が「月読峠」に限定されているという先入観を抱いてしまうと、なかなか思いつかない発想ではないでしょうか。
コンテストの限られた字数の中で、既存キャラクターを総動員させたうえで壮大な世界観を描き切る。あらすじが目に留まった時点で「これはすごいぞ」と思い読み始めましたが、読み終えたいまは全てのキャラクターの過不足がない描写に感動しています。私が読みたかった<序章>の続きが、ここにありました。