月読峠を舞台に、古書店員、興信所員、刑事が、謎の「もうない場所」を描いた手描き地図を通じて交差する連作ミステリだ。巨大な蛇の化石発見という特異なニュースを背景に、町に眠る記憶と個人的な後悔が静かに浮かび上がる。五感に訴える繊細な文体で、存在しないはずの建物の跡や届かない言葉を丁寧に描写。単なる謎解きに留まらず、自身の過去を「訂正」しようともがく人々の心理が、地図の赤バツ印に象徴されている。
静謐な雰囲気のミステリや、複数の視点が重なり合う構成を好む読者。また、地図や古書店、郷愁を感じさせる設定に惹かれる層におすすめできる。