第18話 「リーナは今年二十六ですよ」
俺は空間魔法で針と糸を取り出した。
「よっしゃ、久々の針仕事だ。腕が鳴るぜ!」
「マスター、お裁縫まで出来るんですか?」
リーナが感心した。
「うむ! お前のその緑色の服も破けたりほつれたりしたら縫ってやるからな」
「お母さんみたい」
リーナが言った。
「さすがにお前みたいな子の親の年齢ではないぞ……」
「えぇ。分かってますよ。あーあ、リーナもお母さんとお父さんに会いたいですね」
お父さん、という単語にシャルの顔が一瞬曇った。
リーナは構わず、続けた。
「リーナのお母さんとお父さんは遠いところにいるのです。久しぶりに会いたいのですが」
「え? もしかして、その……亡くなってるとか」
気遣わしげにシャルが言ったが、リーナは首を振った。
「いえ、違います。ピンピンしてますよ」
「遠いところにいるって……?」
「あぁ、新婚旅行です。十二回目の」
「十二回目!?」
「えぇ。見てるこっちが恥ずかしくなるほどのバカップルぶりです。もう何ヶ月も旅行に出かけてますね」
「へぇ、でも良いな。そんなに、好きな人とラブラブだなんて」
シャルが羨ましそうに言った。
「娘からしたら、いい迷惑ですよ。あ、マスター。お酒あるんなら、飲んでいいですか?」
「それは構わんが」俺は料理酒代わりのウィスキーを差し出した。
「お前何歳だよ。十六……精々が十七歳くらいだろ?」
この世界に酒の年齢制限はないが。
リーナはポカンと口を開けた。
「何を言ってるのですか? マスター。……リーナは今年二十六ですよ」
「えッ!?」俺とシャルは同時に唖然とした。
リーナが不思議そうに言った。
「エルフの成長は二十歳くらいでほぼ止まるのですよ? そんなに驚くことですか?」
「いや、確かにそうらしいが……てっきり、お前は十代かと。まだ人間と同じ成長曲線の小娘かと。……俺とそんな歳変わらねぇのかよ」
俺は穴が空くほどリーナを見つめた。
「まぁ、リーナは童顔と言われますし、蝶よ花よと育てられた純粋な子なので若く見られたのかもしれません。背も低いですし」
「……」
俺とシャルは顔を見合わせた。
「先生、リーナさんみたいなのがエルフだと普通なのかな」
「いや……リーナほど、その、純粋……まぁ確かに純粋な子だよな。そういうヤツは珍しいだろう」
リーナはムッと顔を膨らませた。
「なんかバカにしてません? リーナ怒りますよ」
「だってお前……あまりにも、あまりにもじゃん」
俺はモゴモゴと言い訳した。
むっすーとリーナの顔が膨らむ。
仕方ないので、俺は「味見するか?」と鍋から小さな肉と野菜を菜箸でつまみ、リーナの顔の前にやった。
リーナは雛鳥のように大口を開けて食いつき、涙を浮かべながら、味わった。
「熱ッ! 熱いっ! 熱いけど……ホッ美味しいですぅ!」
リーナはすっかり怒りを忘れて喜んでいる。
俺は一瞬コイツの未来が心配になったが、コイツはなんだかんだどうなっても幸せだろうと結論づけた。
さて、シャルの服のほつれと小さな破けはなんとか修繕出来た。俺は服を広げて見て、その小ささに思わず驚いた。
(ホント小さくて華奢なんだなぁ)
とはいえ、シャルはまだ成長期だろう。もう少ししたら、服も小さく感じるかもしれない。その時は頑張っているシャルに洋服をプレゼントしよう。俺はそう決めた。
「ほれ、終わったぞ。シャル。着るといい」
俺がシャルに服を手渡すと、シャルは受け取って、毛布の中で身を捩りだした。やがて、いつもの赤を基調とした服のシャルが毛布から出てきた。
「先生、ありがとう!」
「うむ! しかし、いつまでもその服じゃ小さいから、今度は服屋に行こうな!」
「そ、それってさ……」
消え入りそうな声でシャルが言った。
「デート……かな?」
「あぁ、そうだな」俺は豪快に笑った。デートとは傑作だ。
「アラサーのオッサンとデートはイヤだろうが勘弁してくれよ!」
「と、とんでもない! 先生と出掛けるなんて夢みたい!」
シャルもお世辞をいうようになったとは。少しずつ処世術も身につけ、成長していってるんだな。
俺はしみじみと感動した。
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