第88話 団子の味 秀頼、井戸水と『父の遺産』を知る

万吉は長浜につくと千吉の家に向かいました。

「ここは?」

「私がお世話になっている家だよ」

「伯父上が?」

「うん。私がお世話になっている薬師の家だ。私も薬師なんだよ」


「あらあ!万吉さんじゃないかい」

小夜に声をかけられました。

「小夜殿…」

「で、その子たちは」

「うん、異母妹の亭主が亡くなって大変なので預かってきた」

「妹さんの亭主が?それは大変だったねえ。まあ、お上がりよ。そうそうあんたたち名前は?」


「私は秀…」

「いや、秀吉とお完だ」

「秀吉ちゃんとお完ちゃんだね。まあ、お入り。団子があるよ」

「私は…」

「子どもが遠慮なんかしちゃいけないよ」

「伯父上…」

「いただこう」


「ああ…その前にそこの井戸で手を洗っておいで」

井戸の前にきました。

「伯父上、これはどうするのですか?」

「これはこうして水を汲み上げるんだよ」

「へぇ~そうなのですか?」

二人とも不思議そうに万吉が水を汲み上げるのをみています。


「二人とも、ここは城ではないから自分でできることは自分でやらなくてはいけないよ。それからここの家の人たちはお前たちが太閤の子どもと義姪ということも知らないんだ。だから秀頼は秀吉…完子はお完。わかったね」

「うん…だけど、どうして隠さなきゃいけないの」

「ここの人たちが萎縮してしまうからだよ。私も万吉と名乗っている」

「わかった。そうするよ」


家の中に入ると小夜が団子を振る舞ってくれました。

「おいしい。いつも食べているお菓子よりずっとおいしい」

「それはよかった。たくさんあるからね。こうしてのんびり団子を食べられるのも太閤様のおかげさ」

「え?」

「ああ…秀吉とお完ちゃんは知らなくても無理はないか。昔、この国はどこもここも戦だらけだったんだ。だけどね太閤様が頑張って戦を無くしてくれたのさ」


小夜が用意してくれた部屋で三人は休むことになりました。そして、秀頼は言ったのです。


「伯父上…私は父上が誇らしい。この国から戦を無くしたのが父上だったなんて」



複雑な思いで万吉は秀頼の言葉を聞いていました。


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