継承戦隊バニーブレイバーズ(+ぼっちMEN)俺の中にバニーガールが居ます!

福天六(ふくたむ)

英雄の戦場が頭から離れない

昔、ダークホール団を封印した伝説の戦士がいた。

その名は「バニーレッド」!

圧倒的な戦闘力を持ちながら、最後は自らの存在を犠牲にして敵を封じた。


しかし……ダークホール団は再び封印を解き、侵略の時を伺っていた――


**************************


「遅刻遅刻――!」

朝の商店街を全力疾走する桐生ハヤトは、角を曲がった瞬間に空を見上げて固まった。

空が――割れていた。

黒い渦のような穴が広がり、そこから機械と怪物を融合させたような兵士たちが次々と降りてくる。


「ダークホール団、地上侵攻開始――」


拡声器のような低い声が街に響き渡った。


「な、なんだよこれ……映画の撮影じゃないよな?」


悲鳴。逃げ惑う人々。破壊される店。

現実だった。

ハヤトの足が震える。


(やばい……逃げなきゃ……)


そのとき、耳元で電子音が鳴った。


《バニーブレス、起動可能》


「え?」


手首にはいつの間にか見覚えのないブレスレットがはめられていた。


《選ばれし者よ。変身せよ》

「選ばれし者って誰だよ!? 俺はただの一般人だぞ!?」


怪物の一体がこちらに気づき、武器を構えて迫ってくる。


「うわああああ来たぁぁぁ!」


反射的にハヤトは叫んだ。


「へ、変身とか無理無理無理――!」

《変身コード確認》


光が爆発した次の瞬間。

ハヤトの視界は低くなり、体がやけに軽い。

胸元に、何か――ある。


「……え?」


視線を落とす。

赤を基調にしたヒーロースーツ。長い脚を包む光沢あるタイツ。

頭にはピンと立つバニー耳。

そして――


「……なんで胸あるんだよ!!?」


鏡のように反射し、ひび割れたガラスに映るのは……凛とした美少女バニーガール戦士だった。


「誰だよこれ!? 俺だよな!? いや絶対俺だけど性別変わってない!?!?」

《コードネーム:バニーレッド。戦闘能力最大》

「最大とかいらねえよ!元に戻せよ!」


だが怪物は容赦なく突進してくる。


「ぎゃあああああ来る来る来る!!」


咄嗟に腕を振ると――衝撃波が走った。

ドゴォン!!

怪物は建物ごと吹き飛んだ。


「……え?」


自分の手を見つめるハヤト。


「つ、強すぎじゃね?」

でも。

「……この動き、知ってる。しかも今の判断、俺じゃない……?」

一瞬、

『逃げないで。あなたは私より、強くなれる』


そのとき、空から軽やかな着地音が響いた。


「初変身でその威力?さすがバニーレッドね」


振り向くと、そこには――

青、ピンク、黄色、紫のバニーガール戦士たち。

全員、完璧にヒーローしている。


「え、えっと……みなさんコスプレイベントですか?」

「違う違う、私たち戦隊ヒーローだよぉー!」


ピンクがにっこり笑う。


「今日からあなたも仲間よ」

「いやいやいや待て待て待て!」


ハヤトは自分の胸を指さす。


「なんで俺だけ女になってんの!?そっちは最初から女だろ!?不公平すぎるだろ!!」


ブルーが冷静に言った。


「あなたの変身は“適合率最高の戦闘形態”なの」

「適合率で性別変わるシステムやめろよ!!」


黄色が豪快に笑う。


「細かいこと気にするな!強いんだからいいだろ!」

「細かくねえよ人生だよ!」


その瞬間、空がさらに歪み、巨大な怪物が出現した。

巨大怪物が咆哮を上げ、瓦礫を踏み砕きながら迫ってくる。


「くっ……足が動け……!」


バニーレッド――ハヤトの喉が引きつる。

(無理だ……あんなの勝てるわけ――)


その刹那。頭の奥が、焼けるように熱くなる。


「――っ!!?」


視界が白く弾けた。

次の瞬間、世界が変わった。灰色の空。 燃え尽きた都市。 無数の怪物の死骸。血と硝煙の匂い。


(な……なにこれ……俺、こんなの知らない……)


だが体は迷わず動いていた。長い赤髪が風を裂き、紅のバニー戦士が戦場を駆ける。

――初代バニーレッド。

剣が閃くたび、敵が消し飛ぶ。銃撃を避け、爆炎を踏み越え、仲間を守りながら前へ進む。


『下がらないで!ここを突破すれば民間人が助かる!』


凛とした女性の声。


(俺の声じゃない……)


だが、その感情は痛いほど伝わってくる。恐怖。 覚悟。 そして――絶対に守るという決意。

巨大な敵が立ちはだかる。初代レッドは傷だらけの身体で剣を構え、微笑った。


『怖いよ……でもね』

『それでも進むのが、ヒーローなんだ』


剣が燃え上がる。世界が真紅の光に包まれ――


「レッド!!」

仲間の声で現実に引き戻された。

「……はっ!!」

目の前には、さっきと同じ巨大怪物。

だが。

身体が、さっきよりずっと軽い。

剣の握り方も、構えも――自然にできている。


「俺……今、戦った……?」


心臓が激しく脈打つ。

頭の奥で、誰かが静かに囁いた気がした。


『思い出したでしょう?その恐怖を越える方法を』

ハヤトは唇を噛みしめる。


「……あんたが、初代バニーレッドか」


返事はない。

だが、確かに力が流れている。


その瞬間、怪物の足が地面を砕き、アスファルトが波打つように隆起した。


「くっ……近づくな……!」

バニーレッド――の指先が震える。

剣を握る手から汗が滑り落ちる。

視界の端で、逃げ遅れた人々が瓦礫の影にうずくまっているのが見えた。

(守らなきゃ……でも、無理だ……)

巨大な影が覆いかぶさる。


その瞬間。

頭の奥で、何かが――弾けた。

熱。

痛み。

叫び声。

それらすべてが一度に流れ込んできた。


「――ッ!!」

世界が歪み、砕け、塗り替わる。そこは戦場だった。

空は燃え、雲は黒煙となり、太陽すら赤黒く歪んでいる。

高層ビル群は半壊し、骨のように剥き出しの鉄骨が空へ突き出していた。

地面は血と油と灰でぬかるみ、歩くたびに靴が沈む。

死体。

人間のものも、怪物のものも、見分けがつかないほど積み重なっている。

硝煙の匂いが喉を焼いた。


(……ここは……どこだ……)


だが疑問を抱く暇もなく、身体は走っていた。

赤い閃光が戦場を裂く。

剣が振るわれるたび、怪物の首が飛び、装甲が裂け、黒い血が雨のように降る。

速い。正確。一切の迷いがない。

視界の端に映るのは――

風になびく長い髪と、紅のバニー装束。


(……俺じゃない)


だが感覚は完全に共有されていた。


(この人だ……初代のバニーレッド……)


筋肉の軋み。

傷口の痛み。

肺が焼けるような呼吸。

すべてがリアルだった。


「隊長!南側が突破されます!」


若い兵士の叫び声。

振り返ると、壊れたバリケードの向こうから、数十体の怪物がなだれ込んでくる。

初代レッドは歯を食いしばる。


『……まだ子どもたちが避難しきれてない』


その視線の先に、地下シェルターの入口が見えた。

怯えた人々。

泣き叫ぶ子ども。


『時間を稼ぐしかない』


彼女は一歩前に出た。

ただ一人で。


「無茶です!援護が追いつきません!」

『いいから下がって!』


叫びと同時に、彼女は駆け出した。敵の群れのど真ん中へ。剣が閃き、炎が爆ぜる。

一体、二体、十体。だが数が多すぎる。爪が肩を裂き、牙が太腿を貫く。

血が飛ぶ。痛みが走る。


(やめろ……死ぬ……)

(これ以上無理だ……)


だが彼女の足は止まらない。


『守るって決めたから』

『だから退かない』


怪物が背後から飛びかかる。

反転し、剣で貫く。

爆炎。

吹き飛ぶ肉片。

それでも敵は止まらない。

やがて彼女の息は荒れ、視界が揺れ始める。


『……まだ……終われない……』

(なんでそこまで……)

(怖くないのか……)


その感情に、答えが返ってきた。

恐怖はある。死にたくない。逃げたい。でも――

それ以上に。

誰かが死ぬのを見る方が、ずっと怖かった。

シェルターの入口から子どもの泣き声が響く。

その瞬間、彼女の剣がさらに燃え上がった。


『来るなら来なさい……!』

『私はここを通さない!!』


炎の旋風が戦場を包む。

怪物の群れが吹き飛び、崩れ落ちる。だが代償に、彼女自身も膝をついた。

全身が血に染まる。呼吸ができない。視界が暗くなる。兵士たちが駆け寄る。


「隊長!もう十分です!」

「これ以上は――」


彼女は微笑った。血に濡れたまま。


『……十分なんかじゃないよ』

『ヒーローは、最後まで立ってるもの』


そのとき。空が割れた。黒い裂け目から、巨大な影が降臨する。

これまでの怪物とは比べ物にならない存在。

絶望そのもの。兵士たちが凍りつく。


「……あれは……無理だ……」


誰かが呟いた。それでも初代レッドはゆっくり立ち上がった。身体は限界だった。指も震えていた。それでも剣を構える。


『みんな、下がって』

『これは――私の役目』

「隊長!!」


振り返らず、彼女は前へ進んだ。

一歩。また一歩。


巨大な存在が咆哮するだけで、建物が崩れる。

風圧で身体が吹き飛びそうになる。


(死ぬ……確実に……)


それでも彼女の心は静かだった。怖い。でも後悔はなかった。


『誰かが犠牲になる世界は……もう終わらせたい』

『だから――』


剣を天へ掲げる。炎が空を貫く柱となる。


『私が封印になる!!』


エネルギーが暴走する。身体が光に包まれる。兵士たちが叫ぶ。


「やめろおおお!!」

「戻って来い!!」


だが彼女は振り返らなかった。微笑んだまま。


『未来を――お願い』


次の瞬間。世界が真紅に染まり、すべてが飲み込まれた。


「――ッ!!」


ハヤトは現実へ叩き戻された。膝をつき、荒い息を吐く。

視界が滲む。胸が痛い。涙が止まらない。


「……あんた……こんな戦いを……一人で……」


頭の奥から、かすかな温もりが伝わってくる。

悲しみ。誇り。覚悟。


『だから……あなたに託した』

『私の強さも、弱さも』

『あなたなら、違う結末を選べる』


ハヤトは歯を食いしばる。


「勝手に託すなよ……こんなの重すぎるだろ……」


だが拳は震えながらも剣を握り締めていた。


「でも……」

「逃げないって決めたのは――俺だ」


剣が再び燃え上がる。

今度は初代の炎とは少し違う、荒くて不器用な光。


「あなたの戦いは終わった。ここからは――俺の番だ」


巨大怪物を見据える。恐怖は消えていない。だが、退かない理由を知った。


「ヒーローってのはさ……」

「犠牲になることじゃなくて――」

「誰も犠牲にしない道を探すことだろ!!」


バニーレッドは走り出した。過去を背負いながら、未来へ向かって。


「うわ……ラスボス感すご……」

パープルが静かに構える。

「初陣だけど、いける?」

全員の視線がハヤトに集まる。

怖い。 逃げたい。


でも――さっき守れなかった街の人たちの悲鳴が耳に残っている。

ハヤトは拳を握った。


「……元に戻れる保証ある?」

「たぶん」

「たぶんかよ!」


深呼吸して、前に出る。


「でもさ……今逃げたら一生後悔する気がするんだ」


バニーレッドの目が真っ直ぐ光る。


「性別変わろうがバニーだろうが関係ねえ!」

「俺は――ヒーローになる!」


仲間たちが笑った。


「良い顔するじゃん!」

「それでこそレッド!」

「行くわよ!」


五人が並ぶ。


「バニーブレイザーズ、出撃!!」


巨大な敵へと駆け出すハヤトは叫んだ。


「あとで絶対このシステムの開発者に文句言ってやるからなーー!!」


出現させた剣を構え直し、前を見据える。


「借り物の力でもいい!今は――守れるなら使ってやる!!」


炎の刃が唸りを上げる。バニーレッドは地を蹴った。

――こうして、

史上最も混乱するヒーローの戦いが始まった。


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