相談事
Ryo
現実を教えてあげただけ《序章》
私は相談事を持ち込まれることが多い。
理由は、私に人望があるからでも、人から好かれるからではない。
単に、非モテ女の代表格だからだ。
私は五十二歳、独身。三十年事務員として働いてきて、役職なし。だから私は「先輩」と呼ばれることが多い。「さん」付けよりしっくりするらしい。
相談事は、非モテ中年からされることが多い。多くは恋バナ。と言っても彼らは恋愛経験が恐ろしく少ないため、相手のお世辞や、社交辞令の笑顔でさえ、自分への好意と受け取ってしまう。その結果、玉砕するのだ。
彼らは相談内容を延々と話した後、こう質問する。
「先輩だったら、どうします?」
この質問は、回答者にとってすごく気楽である。
もし「私はどうしたらいいですか?」と質問されたら、彼らにとっての最良の答えを考えないといけない。
だが、「もし私だったら」であれば、話は別だ。それが彼らにとって最悪な結果を招くことになっても、私には何の責任もない。
つい先日のことである。
非モテ女性から相談事を持ち込まれた。
なんと、同じ部署の後輩男性に一目惚れしたらしい。彼女曰く横浜流星似の彼が、彼女に毎日親しく話しかけてくれるそうだ。古株である彼女に気を遣っているだけなのだが、彼女は思いっきり「勘違い」をしてしまい、自分から告白すべきか悩んでいるそうだ。
横浜流星とは十歳差だけど、大したことないですよね? とまで言い切った。
「先輩だったら、どうしますか?」
私は少し考えて、答えた。
「私だったら、告白するかな。『私もあなたのことが好きです』と笑顔で言うわね」
「そうですよね。ありがとうございます!」
その日の夕方、彼女は決行し、翌日から職場に来なくなった。
私は過去の失敗談を伝えただけ。嘘は言ってない。
私は昔、十歳下の男性に告白して、コテンパンにされたのだ。
私はどうしたか、を伝えたのだ。
そして今日、新たな相談事を持ち込まれた。
相談者は非モテとは真逆の、キラキラしたリア充女子。
なぜ私のところに来たかと言うと、私と同じ非モテ中年の代表格男性に付きまとわれているそうだ。
この私のところに来たのは、よほど困っているのだろう。
今日は、どんな現実を教えてあげようかな。
⸻
終
相談事 Ryo @Ryo-no-novel
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